隠された真実(5/15) 「……やられましたね」 眼鏡のブリッジを押し上げながら、ジェイドがため息を溢した。 最初に自分達が見た魔物は、此方の注意を港に向ける為の御取りだったらしい。その証拠に、ジェイド達が確認した所、港では何の騒ぎも起きていなかった。 「困りましたね。親書が無くては、和平締結は成立しません」 「じゃあどーすんだよ!?」 「アリエッタを追い掛けるしかなさそうだな…」 ガイの言葉に、ルークは港でヴァン師匠は待ってくれてんだぞ!!と抗議しようとしたが、じゃあ貴方は戦争が起きても良いの?とティアに諭され、口を閉ざさるをえなかった。 戦争が起きたらヤバい、という程度はルークも理解しているのだろう。ルークが少し大人しくなった頃に、アニスが申し訳なさそうに肩を落とした。 「ふみゅう……ごめんなさい。あたしが根暗ッタに捕まったばっかりに…」 『仕方ないよ。けど、アニスが無事で良かった』 「サク様…」 『それに……皆に謝らなきゃいけないのは、私の方だし』 「どういう事ですか?」 ティアが首を傾げる。その疑問に答えたのはイオンだった。 「アリエッタは、六神将であると同時に、サク付きの導師守護役でもあるんです」 『だから、責任は私にあります。…本当にごめんなさい』 「サク様だけのせいじゃありませんよぅ!それに、根暗ッタの奴も、何かアッシュに脅されて…とか言ってたし。あれはどういう事なんだろう?」 「さあな。流石にそれは本人達から聞き出さないと、どーしようもないだろうさ」 アニスがむーっと難しい顔になるも、答えは出ないらしい。これより詳しい情報がない以上、ガイもお手上げ状態である。 こういう時、いつも話を切り替えるのはジェイドで……かれはポンと手を叩くと、「では」と言いながらいつもの笑みを浮かべた。 「今からアリエッタを追うとして……彼女が言っていたコーラル城というのは?」 「確か、ファブレ公爵の別荘だよ。前の戦争で戦線が迫ってきて放棄されたんだ。七年前、誘拐されたルークが発見された場所でもある」 「へ?そうなのか?」 ガイの説明に、全っ然覚えてねーや、と頭を掻くルーク。ルークがマルクトに誘拐された云々の話は、サクもタルタロスで聞いていたから知っている。もともと知っていた、というのが正しいのだけれども。 「もしかしたら、行けば思い出すかな」 「……思い出さないかもしれませんよ?」 ジェイドがずれてもいない眼鏡の縁に触れる。今の表情は伺えないが……フォミクリーとの関係を示唆し、ルークの記憶喪失や誘拐の件を考えているのは間違いないだろう。 「ま、別にどっちでも良いけどな。困ってねーし」 「普通気になると思うけどなぁ。お前のそういう所は感心するよ」 「そうか?ガキの頃の事なんて、どうせつまんねーことだろうしさ」 ルークにとっては、本当にどうでも良い様子だ。ナタリア様も可哀想に…と、ガイは少し気の毒そうに呟いていたけど。 『ルーク、何度も巻き込んでしまってごめんなさい』 「しゃーねぇなぁ。乗り掛かった船だし、何か知ンねーけど俺も来いって言われてるしな。だから、その……お前、あんまり気にすんなよ」 …てっきり、ヴァン師匠を待たせてるんだからな!とか文句を言われると思っていたのだけれど……これは少し意外な反応だった。 少なからず、コーラル城にルーク自身も興味があるのかもしれないけど……それにしても、後半の言葉は明らかにサクの事を気にかけてのものであった。 『……ありがとう、ルーク』 何処か不器用ながらも、今はルークの気遣いが嬉しかった。 *前 | 戻 | 次#
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