隠された真実(4/15)

あの後、宿屋にてヴァンへの事情説明を終えると、その日は既に日が暮れ始めていた事もあり、一行は宿屋に一泊してから国境を越える事になった。

翌日、ヴァンから受け取った旅券を携えて、和平の使者御一行は国境を漸く越える事が出来たのであった。



「漸くキムラスカに帰ってきたのか……」

「駄目駄目。家に帰る迄が"遠足"なんだぜ」



疲れ切ったようにぼやいたルークを見て、ガイが笑った。遠足、ねぇ……なんとも物騒な遠足だ。



「こんなヤバい遠足、カンベンって感じだけどな」

『ガイ先生ー、バナナはオヤツに入りますか?』

「オヤツというより、レシピの具材に入るんじゃないか?」

『そんな、真面目に返されても……』

「え?」



ガイって天然?と肩を落とすも、真面目に返された理由にサクはふと気付く。どうやらこのネタはオールドラントでは通じないらしい。私も元ネタは知らないけど。

そんなこんなで、無事カイツール軍港に到着した一行。ヴァンが一足先に船を手配する為に到着している筈、なんだけど…



「……ああ?なんだぁ?」



巨大な影が過り、一同が空を仰けば、上空を魔物が飛んで行った。思わずルークが驚きの声を漏らした。



「あれって……根暗ッタのペットだよ!」

「根暗ッタって……?……ひっ」



いきなり上擦った声を上げたガイに、何事かと振り返ってみると……アニスがガイをぽかぽかと叩いていた。



「アリエッタ!六神将妖獣のアリエッタ!」

「わ……分かったから、触るなぁ〜〜!!」



……ガイには悪いけど、これは確かに面白いと思う。けど、ガイの震え方が尋常ではないから同時に可哀想な気もする。



「港の方から飛んで来たわね。行きましょう」

「ほら、ガイ。喜んでないで行きますよ」

「嫌がってるんだ〜〜!」



しかし、仲間達は無情にも、一連のやり取りを完全に黙殺していく。歩き出したティアに続いて、ジェイドもガイの肩を叩いて彼女のあとを追う。大して珍しい事でもない為、ルークもスルーだ。イオンすらも、港の方が気になるらしく止めに入らない。

……仕方ないなぁ。



『アニスー、その辺にしておかないと置いてっちゃうぞー?』

「はぁ〜い」

「た、助かった…」



サクがアニスを手招きして呼ぶと、彼女は素直に返事を返し、パッとガイから離れると背中のトクナガを揺らしながら此方に向かって走って来る。

その時だった。


ブワッ

「うわ…っ!!?」

「な…何!?」



突然上から叩き付けるような風が吹き荒れ、サクは思わず腕で顔を庇った。ガイとアニスの声が聞こえたけれど、今は目を開けて状況を確認する事が出来ない。



「キャッ…!?」

「!アニス!?」



新たに聞こえたアニスの短い悲鳴と、此方の騒ぎに気付いて引き返して来た様子のルークの声が重なる。

漸く風が弱くなり、庇っていた腕を下げると、そこにアニスの姿は無かった。



『…え、アニス!?』

「!上よ!!」



何かに気付いた様子のティアの声につられて上空を見上げれば、そこにアニスはいた。

……空を飛ぶ魔物に捕まって。



「やっぱり根暗ッタ!何しやがんだごらぁ!?」

「アリエッタ、根暗じゃないモン!アニスの意地悪ぅ〜!!」



アニス恐っ、と若干引き気味になりつつも、彼女の隣に視線を向ければ、そこには魔物の背に乗ったアリエッタが泣きそうな声でアニスに抗議していた。



「あいつは……タルタロスにいた!」

「アリエッタです!」



イオンが表情を青ざめさせながら、ルークの言葉に答えた。



『アリエッタ!どうして…』

「…イオン様…サク……ごめんなさい……。アッシュに脅されて……」

「アッシュにって、アンタ……うわあっ!?」



アリエッタが言うが早いか、魔物がパッとアニスを離して地面に落とした。アニスは地面とぶつかる寸前にトクナガを巨大化させ、クッション代わりにして上手く着地していた。おお、お見事!



「いったーい!酷いアリエッタ!痛いじゃん!」

「酷いの……アニスだもん!アリエッタのイオン様を取っちゃったくせにぃ!」

「アリエッタ、違うんです!あなたを導師守護役から遠ざけたのは、そういう事ではなくて――」

「ああ〜〜〜っ!!?」



続く言葉は、突然叫び声を上げたアニスの声によって遮られた。全員の視線が、再びアニスへと向けられる。



「親書がないっ!!」

「な……何だと!?」



焦った様子でアニスが懐を探るも、ある筈の物が無くなっている事に気付き、サアッと表情を青ざめさせている。まさか、とルーク達がアリエッタを見上げれば、彼女の手元には筒状の物が握られていた。……間違いない、親書だ。



「親書は、アリエッタが預かった。返して欲しければ、ルークとサクとイオン様がコーラル城へ来い……です。来ないと……親書を……燃やす……です」

『(Σ燃やすの!!?)』



そうして用件だけを告げると、アリエッタは魔物と共に素早く東の方角へと飛び去っていった。……あれ?ちょっと待って。イオンとルークは兎も角、何故に私まで指名されたんだろう。



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