タルタロス襲撃(9/11) 「暫くは全ての昇降口が開かない筈です」 昇降口が閉まったのを確認してから一行はタラップの下に集まり、ジェイドの言葉で漸く一息ついた。 「ふぅ……助かった……。ガイ!よく来てくれたな!」 「やー、捜したぜぇ。こんな所にいやがるとはなー」 ルークもガイに会えて嬉しそうに笑っている。……初めて、ルークが安心したような笑顔を見たかもしれない。 「サク様も無事だったんですね」 『うん。有り難うティア』 気遣ってくれたティアにサクは笑顔を向ける。ライガに蹴落とされてたけど、ティアに怪我はなさそうだ。良かった。 「ところでイオン様。アニスはどうしました」 「敵に奪われた新書を取り返そうとして、魔物に船窓から吹き飛ばされて……。ただ遺体が見つからないと話しているのを聞いたので、無事でいてくれると……」 窓の外で落ちていったアニスの事を思い出す。……うん、トクナガがいるから大丈夫だろう。 「それならセントビナーへ向かいましょう。アニスとの合流先です」 「セントビナー?」 「ここから東南にある街ですよ」 ルークの疑問の声に、イオンが答える。 「分かった。そこまで逃げればいいんだな」 「そちらさんの部下は?まだこの陸艦に残ってるんだろ?」 タルタロスを指すガイに、ジェイドは淡々とした口調で話す。 「生き残りがいるとは思えません。証人を残しては、ローレライ教団とマルクトの間で戦争になりますから」 シン……と、ルーク達の間に暗い空気が流れる。ガイの眉も曇った。 ……今はまだ、言わない方が良いよね。皆には悪いけど……計画を知られたくないし。奇襲直前に全員飛ばしたマルクト兵達の事を思い返しながら、サクも沈黙を通す。 「……何人、艦に乗ってたんだ?」 「今回の任務は極秘でしたから、常時の半数……百四十名程ですね」 『っ……そんなに…』 沢山の人数だったんだ……必死だったからその時は何も思わなかったよ。ああ、けど、何だか今になって疲労が…… 「大丈夫かい?顔色が優れないようだけど…」 『あ、うん。大丈夫です…』 ナイスガイに心配されてしまった。なんて役得……ごめんなさい。こんな重い空気の中不謹慎で。 「百人以上が殺されたってことか……」 「しかし―――…」 「?」 何か引っ掛かる事があるらしく、ジェイドが珍しく言葉を詰まらせる。そんなジェイドに、ルークが何だよ?と首を傾げる。 「……いえ、何でもありません」 眼鏡のブリッジを直して、ジェイドはそう言葉を続けた。確証がない事は、言いたくないのだろう。 内心、ジェイドにバレたかと思ってドッキリしたのは秘密。 「行きましょう。私達が捕まったら、もっと沢山の人達が戦争で亡くなるんだから……」 ティアの言葉に、一同が神妙な顔付きで頷いた。 今回、私が一つだけ後悔するなら……ジェイドがルークに跪くサブイベント(違っ)を見逃した事だろうか。そんな事を呑気に考えていたサクの後ろで、ジェイドは一つの奇妙な違和感について思案していた。 神託の盾達に敵襲を掛けられた時、ジェイドは艦橋に連絡を取ろうとした。しかし、その時既に艦橋からの応答もなく、タルタロスが占拠されるのも予測よりかなり早いものだった。 相手に六神将がいて、神託の盾兵達の手際が良かったからにしても、いくら何でも早過ぎる。また、自分達が神託の盾兵達に捕まる前にも、誰一人として、艦内にマルクト兵を見掛けなかった。…彼等の死体ですら。 まるで、戦艦を守るマルクト兵達が、己以外に誰一人としていなかったかのように。 *前 | 戻 | 次#
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