タルタロス襲撃(4/11)

さて、ルーク達は何処かな。ていうかぶっちゃけ、マルクト兵の人達を全員超振動で飛ばした後の事は何にも考えてなかったりするんだよねぇ…



「!お前は…」

『ピコハン!』

ピコーン…



神託の盾兵達と遭遇する度に、ピコハン並びにピコレインで尽く撃退しながら、サクは艦内を進んでいく。ノープラン過ぎるのも考えものだな、とか考えながら。お陰で私が通った後の道には兵士達の屍類々……いやいや、皆さん普通に気絶してるだけですよ。

六神将の誰かと鉢合わせしたら、大人しく捕まろうとは思ってるんだけど……運が良いのか悪いのか、今のところ彼等と遭遇してはいない。あ、そういえばラルゴは大丈夫かな……それだけがちょっと心配だ。



『………っ!』



鼻先を霞めた鉄臭さに、サクは思わず顔を顰めた。自然、駆け足で向かったその先には……男の巨体が倒れていた。

血の臭いはここが発生源だったらしい。駆け寄ってみると、彼の胸からは血が溢れ出していて、一向に止まる気配はない。サクの足許近く迄既に血溜まりが広がり始めている。



『(心臓を一突き……いや、僅かにズレてるのかもしれない)』



既にラルゴの意識は無い。彼の失血量からみて、今は一刻の猶予もなさそうだ。従って、悠長に治癒術士を待っている場合ではない。



『命を育む女神の抱擁…キュア』



詠唱と共に、サクを中心に譜陣が展開される。ラルゴの傷口に手を翳せば、光と共に彼の傷が少しずつ癒えていく…。



「う……」

『!気がついた?』



低く呻いたラルゴを見れば、彼はうっすらと目を開けた。意識が戻ったらしい。私の顔を見るなり、表情が驚きに変わった。



「お前は……導師サク…?」

『動かないで。今傷を塞いでるから』



治癒術を掛けながら、サクは再び視線を傷へと戻す。最後の仕上げを施せば、傷口は直ぐに完全に塞がった。

物語の中で、彼がジェイドによって瀕死の重傷を負わされる事は知っていた。その後、無事に助かる事も。

きっと、槍に刺された後直ぐにでも治療されたのだろう。しかし、私が来た時にはラルゴ以外に誰も居なかった。あのままサクが放って置いたら、彼は死んでいたかもしれない。

私が未来を変えてるせいか、色んな所で筋書きにある未来が変化してきている。そのせいでラルゴが此処で命を落とすなんて……冗談じゃない!



『傷は塞いだけど、失血が多い。暫くは動いちゃ駄目だからね』



そう言ってから、ラルゴが何かを言う前に彼にナイトメアを施した。眠りに落ちたラルゴにホッと息をついてから、サクは再び立ち上がった。

多分、ルーク達はこの先に行ったんだろうけど……今から行って追い付けるだろうか。この先に起こりうる事象を記憶の底から手繰り寄せながら、サクは再び表情を顰めた。

私がルークに追い付けば、彼が此処で自身の手を汚すのを防げるかもしれない。誰かが無駄に血を流す事も。

だけど……



『………梯子発見』



暫く歩いていった先で、備え付けられた梯子を見付けた。確か、此れを登っていくと甲板に出れた筈。その事を思い出したので、早速登ってみる事にした。



カチャ…

『お、出れたかな…?』



天井にある昇降口を押し上げ、顔を出したらルークがいる筈の甲板より高い場所に出てしまった。ちょっとおしい。が、



「…誰だ?」

『む、その声は……アッシュー?』



ヨジヨジと中から這い出ながら声の主に返事を返す。うん、これは予想外。

赤毛は赤毛でも、そこにいたのはアッシュだった。



- 110 -
*前 | | 次#

(4/11)

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -