タルタロス襲撃(2/11)

導師サクが教団から姿を消して、もう一週間が経つ。彼……シンクが任務から教団へと帰還した時には、既に彼女はいなくなっていた。

別に、サクが教団から姿を消すのは、実はそう珍しい事ではない事を、シンクは知っている。アリエッタや僕を連れて、度々何処かへ出掛ける事はわりと多いからだ。

過去一番の遠出は、バチカルの闘技場だろうか。飛び入り参加で個人戦、並びに団体戦を勝ち抜いて優勝してたっけ。

まぁ、サクにはそれだけ実力があるんだから、心配するだけ時間の無駄なのかもしれないけど。

……いや、問題はそうじゃない。今回サクが姿を眩ませている期間が、やけに長いのが問題なんだ。

しかも、今回の失踪に加担したとされるアリエッタから情報を聞き出すも、ライガの所へ二人で向かった後、サクとは別れたらしく……その後の足取りは未だに掴めていない。

いつもなら必ず守護役を付けるサクが、今回に限っては付けていない。しかも、一週間も音沙汰が無いなんて……何かあったのだろうか。



「(どうして……僕に何も言ってくれなかったのさ)」



いつもそうだ。

サクは自分一人で何でも背負い込んで、肝心な事は何も話さない。

別に隠し事をするなとは言わないけど……もう少し、僕の事を信用して欲しいと、思う時がある。



「(いや……それは無理か)」



僕が六神将になった頃から……サクの監視をヴァンから命じられている。その事に彼女は既に気付いているのだから、そんな僕に全てを話せだなんて……無理がある。

けど、僕はヴァンにサクの全てを報告したりはしていない。サクから秘密にして欲しいと、頼まれた事は勿論……僕だけに聞かせてくれた話も含めて。

本音を言うと……サクにはもう少しだけ、僕を信じて欲しかった。

こんな風に、サクが何も言わずに僕の前から居なくなるなんて、今まで思ってもみなかった。

まるで、僕は必要ないと言われたみたいで……



「シンク。タルタロスが見えてきた」

「……、」



空を飛行する魔物の背に乗りながら、考え事をしていたシンクはリグレットの一言で直ぐ様思考を切り替えた。サク付きの導師守護役から、今作戦の指揮を任される、六神将を束ねる参謀長へと。



「これより、導師イオン奪還作戦を開始する!……いくよ」



シンクが作戦開始の合図をし、アリエッタが魔物へと指示を出す……これにより、ライガを乗せたフレスベルグがタルタロスに向かって大きく旋回した。



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