タルタロス襲撃(1/11)

チーグルの森を出た後、タルタロスに連行されたルークとティア、そして導師サクは艦内の一室に纏められ、これから取り調べを受ける事になった。

室内には他にジェイドと彼の副官であるマルコ、イオンとアニスがいた。余談だが、私が座っている席の向かいにはミュウがいたり。



「では、まずは導師サク。何故貴女はイオン様を探していたのか、理由をお聞かせ頂きたいのですが」

『え……今此処で、ですか?』



開口一番にジェイドからそう言われ、サクは思わず表情を顰める。隣には何の事情も知らないルーク達がいるんですけど……。今更ながら、何故別室に分けなかったのか不思議だ。



「おや?他人に聞かれると困るような内容なのでしょうか?」

『そうですね。事は国家機密ですし、ソチラとしては情報漏洩は極力避けたいでしょうから』



国家機密。その一言を聞いただけで、ジェイドの纏う雰囲気が僅かに変化した。表情は、あくまで笑顔を保ってはいるが。

ジェイドの事だ。確証はなくとも、私の用件が和平締結に関する事だと察したのだろう。同じくして、イオンもまさかという表情を浮かべている。



「ふむ……では、今から別室にご案内致しましょう」

「はぁ?何で此処で話さねぇんだよ?つーか俺等を待たせんのかよ」

『ごめんねルーク。直ぐに終わるから』

「チッ……さっさと済ませろよな」



不機嫌丸出しのルークに苦笑混じりに謝罪しながら、サクはジェイドと共に部屋から退室して、すぐ隣の部屋へと移った。勿論、イオンとアニスも一緒だ。



「それで、国家機密というのはどういう事でしょう」

『ピオニー皇帝陛下からちょっと届け物を頼まれまして。届けるのが遅くなってしまい、申し訳ありません』



取り出したのは、高価な装飾が施された筒と手紙。筒をイオンに渡し、手紙(なんとピオニー直筆)をジェイドへと渡した。

手紙を読むなり、珍しくもジェイドの表情が僅かに驚きに変わった。ついで、何故か呆れた風にため息をつかれた。……一体何を書いたんだピオニー。



「この親書は……」

『そう。キムラスカとの平和条約締結を提案したものだよ』

「はうあ!? 何でサク様が親書をお持ちに!!?」

『いや、だからピオニー陛下から頼まれたんだってば』



筒から中身……親書を取り出したイオンとアニスも、驚いた様子で此方を見てくる。えー…そんなに予想外だって顔をされてもなぁ。



『手紙にも書かれてると思いますけど、今回私も使者の一人として協力させて頂く事になりました』

「貴女がコレを受け取った詳しい経緯を、是非ともお聞かせ願いたいですねぇ」

『お忍びで首都にお邪魔していたらブウサギに導かれ、偶然仲良くなったピオ君から頼まれました』

「…………」



これでジェイドには大方の話が通じてしまうから頭が痛いのだろう。米頭を押さえながら、ジェイドからはもう結構ですと言われた。

マルクトの懐刀もなかなか苦労しますね。



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