戦闘システム

テルカ・リュミレースに来て、まず最初に困った事。



「臥龍空破!」



シンクは格闘家だから、譜術を使えなくても体術だけでかなり戦える。術技の場合はここでは音素が使えないから、譜術効果を除いた純粋な体術…にはなってるけど、これ位ならまだマシだ。でも私の場合は、譜術をメインにして戦っていた分、譜術が使えないこの現場はかなり痛い。



「いや、サクは打撃戦とかも結構いけたでしょ」

『戦えるけど譜術の方が得意なの!』

「フェイタルストライクを出しまくってる奴が何言ってんの?」



魔物を相手に、シンクは結構余裕そうな様子。まぁ、魔物といってもハッキリ言って雑魚レベルだから、シンクからしてみれば実際に余裕なのだろう。

一方でサクはというと、苦戦している訳ではないが、譜術が使えないせいか戦闘にキレがない。いや、フェイタルストライクで雑魚を一撃で仕留めてる奴にキレがないとかいうのもどうかと思うけど。

マナがあれば魔術が使えるけど、生憎この世界にはまだ少ない。代わりにエアルがあり、魔術を駆使するには現状エアルをエネルギー源として消費する必要がある。

譜術や魔術を専門に扱ってきたサクからしてみれば、非常に面倒くさいの一言に尽きる戦闘システムだ。個人的に晶術の方が良かったかもしれない。

せめてエアルをマナに変換出来たら良いの…に……?

…あれ?それって何か出来そうじゃね?って思ったから、早速体内にエアルを取り込んでみた。音素やマナを体内のフォンスロットから取り入れるのと同じ要領で。



『……ビンゴ』



蓄積されたエアルを、マナとして変換する。もっと慣れれば意識せずとも自然に、感覚だけで出来そうだ。



「サクっ!」

『!』



シンクの声に振り返ると、すぐ傍まで魔物が迫っていた。思わずニヤリと笑みが溢れる。魔物が飛び掛かって来たタイミングを見計らい、サクは魔物にBCロッドを向けた。



『ウインド・カッター!』

カッ



ロッドを翳した先で魔方陣が展開され、魔術が発動した。吹き荒れる風が魔物を一瞬で切り刻み、エアルへと還っていった。

エアルを大量に取り込み過ぎると、酸素と同じ理屈で体に毒とかいう話は……今の所、問題無さそうだ。秘奥義クラスの術を使うと倒れたりするかもしれないけど。



「何だ。譜術も使えるじゃん」

『今のは魔術だからちょっと術式が違うよ』



戦闘を終えたシンクに笑い掛ける一方で、サクはふと手に何かを握っている事に気付いた。何かと思い手を開いてみると、そこには、小さな砂粒の様な物があった。砂や埃と見間違えそうな大きさだけど、とても微弱なマナを感じるソレ。



『(ひょっとして、聖核(アパティア)……の欠片?)』



私は始祖の隷長(エンテレケイヤ)か。一瞬思った。分類されるなら満月の子の方かと思ってたのに、まさかの精霊扱い。ちょっと違うけどね。

聖核の欠片は、意識したら体内に取り込む事が出来た。多分、始祖の隷長と同じオプションがあるならもっと体内に蓄積出来る、筈。



『よっし、この調子でガンガンお金を貯めるぞー!』

「その前に、まずはこの森を抜ける事を考えようか」

『………』



サクとシンクがテルカ・リュミレースに来てから早数時間。ずっと薄暗い森の中をさ迷い続けている二人であった。フレン助けて!


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