鐘は始まりを告げる
やあお久し振りだねローレライ。呼び出して早速だけど、何かテルカ・リュミレースの世界の人がオールドラントに何故か来ちゃったみたいでさ。何か原因知らない?…ふーん。ローレライも知らないんだ。今回は珍しくローレライのせいじゃなかったんだね。ちょっと…というかかなり意外だよ。
まぁ良いや。それより、フレンをテルカ・リュミレースに戻してあげたいんだけど、何か方法はない?シルヴァラントの時みたいに。出来れば私もテルカ・リュミレースに行ってみたいんだけど……あ、本当に?やっぱり超振動で行けるんだ。
……あぁー、やっぱりそうなるか。惑星全域を守る結界があるからねぇ…まあそれは仕方ないよね。シンフォ…じゃなくてシルヴァラントの時も似たような理由だったし。大丈夫、片道切符でも結界を解いて、あとエアル…というかマナが安定すれば帰って来れるでしょ?あの時もそうだったし。うん、なら問題ないよ。有り難う。全然大丈夫!
『……という訳でローレライに協力して貰えばテルカ・リュミレースにも行けそうだよ』
「どういう訳で!?」
シンクにツッコまれた。どうやら私とローレライの会話は当事者同士にか聞こえていなかったらしい。うわぁ、端から見たら私独り言が多い痛い子じゃん。道理でフレンが怪訝な顔付きでいる訳だ。
『えーっと、取り敢えずテルカ・リュミレースに行ける手段は見付かったって事』
「本当かい?」
『うん』
ようやくフレンがホッとした笑顔を見せた。希望が見えて、少し安心したのだろう。
『で、フレンを確実にテルカ・リュミレースに戻す為に私も一緒に行こうと思うんだけど……問題が一つあるの』
「問題って?」
『向こうに行くと、暫くの間は確実に戻って来れなくなるらしいの』
ローレライ曰く、別次元の世界に干渉する事による弊害なんだとか。
「……どっかで聞いた事のある話だね」
『うん。私が以前ローレライを解放した後に飛ばされた世界で発生してた条件(バグ)とほとんど似てる』
要するに、シンフォニアの時と似たような状況になるらしい。過去に一度シンクに話して聞かせた事があるだけなのに……よく覚えていたものだ。流石シンク。
オマケに時間の流れも微妙に異なるようで、シンフォニアの時は向こうで一年過ごした筈なのに、オールドラントに帰って来たら二年程経っていたという。
まぁ、今回はシンフォニアの時程時差は無いらしいんだけど。それでも一年は確実に掛かるだろう。
「…君の気持ちはとても有難い。けど、君が確実に戻って来れる保証も無いんだ。僕の個人的な事情に君を巻き込む訳には…」
『けど、私のサポートが無いと魔導器の結界に弾かれて、また別次元の世界に飛ばされる可能性があるよ?』
私なら第二超振動で結界に一瞬だけ穴を開けて確実にテルカ・リュミレース内に侵入出来るけど……フレンだけとなると、確実にテルカ・リュミレースへ戻せるという保証はしかねるのだ。
真面目なフレンが、此方が背負うリスクが高過ぎるからと断ろうとするも、サクもフレンだけでは無理だと首を振る。
『大丈夫。此方に帰って来れる確証はあるからさ』
「……君は、本当にそれで良いのかい?」
「サクが大丈夫って言うなら、大丈夫なんでしょ」
フレンが申し訳なさそうにシンクに尋ねると、シンクは肩を竦めて見せた。
『フフフ、またシンクと旅が出来るね』
「………やっぱり僕も連れて行く気なんだ」
『旅は道連れ世は情けって言うでしょ』
「情けは他人の為ならず、とも言うけどね」
シンクを一人にしないから安心して!と彼の言葉をスルーして笑う彼女に、彼はやれやれといった様子。
『じゃ、二人とも準備は良いね?早速今から異世界に飛ぶよ!』
「え、今から!?流石にいきなり過ぎじゃ…」
「言伝ても済んだ。グミも買い揃えてあるし、ライフボトルも持った……問題無いよ」
「君はいつ準備をしたんだい!?」
「何言ってんの。そんなの最初からだよ」
「(Σ彼も初めから行く気だったのか!!)」
全てにおいていきなり過ぎる展開とその早さに、全くついていけていないフレンであった。
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