世界の理を超える者


「此処が異世界!?そんな馬鹿な!!」

『けど、エアルを感じないでしょ?魔導器(プラスティア)とかも此処には無いし…音機関ならあるけど』



信じられない、といった様子のフレン。ひょっとしたら、異世界じゃなくて別の惑星かもね、とはシンフォニアの世界に行った時にも思った事だけど、真偽の程が分からないから黙っておく。どちらにしろ、大差は無いし。

フレンには、一通りこの世界の事を話して聞かせた。帰宅するなりフレンをフレイルとやはり勘違いしたシンクも一緒に、今は三人でティータイム中だ。



「ガイとフレイルが似てるとは思ったけど、アンタはそれ以上だね…」

「……そんなにその人達は僕と似てるのかい?」

「似てるなんてもんじゃないね。特に後者に関しては」



レプリカかと疑う位には。違うみたいだけど。と、シンクが真面目な顔で話す。

ああ、今すぐにマルクトからガイを、ダアトからフレイルを呼び寄せたい。そして三人を並べてみたい。特にフレイルとフレンを!!いっそ超振動使って行っちゃいますか!?ちなみに、不可能ではない。



「……ユーリがついているとはいえ、エステリーゼ様が心配だ。僕は戻らなきゃいけないのに、どうすれば……!」

『(どうやら結構序盤のようだね…)』



隊服から見ると、魔核奪還編の頃っぽい。もしくは満月の子編辺りかな……懐かし過ぎて記憶がかなりうろ覚えだ。何だっけ、罪を重ねるRPG……だったかな?実はシンフォの時以上に記憶が曖昧だったりする。



『……あ、良かったら協力しようか?』

「え?」

『確認取ってみないと分からないけど……何とか出来るかもしれない』

「……サクなら本当に何とかしちゃいそうで恐いよ」



多分、ローレライを呼び出せば何とかなると思うんだよね。シンフォニアの時みたく。



『出来れば私もフレンの世界に行ってみたいし』

「は?ちょっとサク!?」



フレンはポカンと呆気に取られた様子で、シンクは思わず椅子から立ち上がって止めようとする。

シンクも心配しなくて大丈夫だって。確か、TOVは楽しめる世界だった筈だし。傍観に徹すれば良いさ。



『そうと決まれば直ぐに旅支度をしなきゃ!あと、誰か来た時の為の書き置きも必要だね……それこそフレイルにでも言っとこうかな』

「完全に行ける事を前提に話を進めてるし!!」



思い立ったが吉日。直ぐ様旅支度を始めたサクを前に、シンクははぁ…と最早お決まりになりつつあるため息を溢した。



「僕が言うのも何だけど……彼女、止めなくて良いのかい?」

「止めるだけ無駄だよ」



こうなったサクは止められない事を、シンクは誰よりもよく知っている。無駄な労力は消費したくないのだ。



「フレン…だっけ?安心しなよ。サクがああ言うって事は、確証があるって事だから」



ぬるくなった残りのコーヒーを口にしながら、シンクはフレンに言う。早く帰れそうで良かったね、とまで言う始末だ。慣れているな、とフレンはシンクの様子を見て漠然と感じた。



「(彼女は一体……何者なんだろう)」



今までも何人もの人々が抱いてきた疑問を、フレンも例外なく抱くのであった。


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