音の精霊


「あー、つまり?サクが音の精霊を召還する歌を詠ってみたら音の精霊じゃなくて、音の精霊の身内(コイツ)が来ちゃったって事?」

『端的に話せばそんな感じ。そしてコイツ呼ばわりは止めなさいロイド』



旧トリエット跡を出たら倒れたコレットを休める為に宿屋に来た世界再生の神子様御一行。その道すがら赤い髪の彼の説明をロイド達に簡単にしつつ、取り敢えず宿屋にチェックインして落ち着いた次第である。



「へぇ〜、同じ精霊でもイフリートとは全然姿形が違うんだね」

『う〜ん、そうだねぇ……(まぁ、正確には精霊でもないし)』

「貴方は精霊の卷属で、サクは貴方の契約者……という認識で間違いないわね?」

「あぁ、そうなるな」

「素晴らしい!!」

「Σ!!?」ビクウッ

「精霊との契約、しかも文献にも記されていない未知の精霊!嗚呼、サクが羨ましい!!」

「ね、姉さん落ち着いて!二人共引いてるよ!!」

『「……;」』



ジーニアスとリフィルの対称的な反応に、サクと青年はやや苦笑い気味。対称的な……というかリフィル先生の方は完璧遺跡モードのスイッチ入っちゃってるね。

取り敢えず、彼らの反応的には信じて貰えたらしい(但しクラトスは除く)。もっとも、強ち嘘は言ってない。私も彼も。かといってクラトスから完全に怪しまれている手前、当然全てを話す訳にもいかず、話していない事も多々あるのだが。致し方無いよね、こればっかりはさ。



「ねぇ、音の精霊さんの名前は何?」



そういうコレットはいつの間に復活したんだい、というサクの疑問は赤い髪の青年を見上げて首を傾げるというとても可愛らしいコレットの動作により頭の中から一瞬で消え去った。彼女の純粋無垢な笑顔は、サクにとって超振動並の破壊力だ。

しかし、彼女の最もな質問は彼にとっては少々苦い質問だ。彼の名前は間違いなく"ルーク・フォン・ファブレ"である。が、彼自身にはその名を名乗るのに僅かに抵抗があるようで、困った風に苦笑を浮かべている。

彼の事情は複雑であるが故に、何となく分からなくもない。ルークと名乗るか、アッシュと名乗るか………個人的にはルークと名乗って良いと思うのだが、まだ気持ちに折り合いがつかないのかもしれない。

かといって間を取って完全同位体だからローレライと名乗るのも、精霊の代行者と言った手前、どうかと思うし……はてさて、どうしたものか。



「俺は……」

『…アシェルだよ』

「っ!?」



言い淀む彼より先に、私は咄嗟にそう言った。青年は僅かに驚いた表情を見せたが、サクは素知らぬ顔でコレットに微笑む。



「アシェルっていうんだ。私はコレット、よろしくね」

「アシェル!俺はロイドってゆーんだ!んでコイツは…」

「ジーニアス!!もう、僕にもアシェルに自己紹介くらいさせてよ」



ワーワーと言い合いを始めた子供達に苦笑しながら、再び視線をアシェルへと向ける。



『(アッシュとルークの両方から取った名前……迷ってるなら、今だけでもそう名乗っておいたら?)』

「(サク……)」




チャネリングで密かに会話を交わしながら、サクは苦笑する。彼は小さくその名を呟くと、思いを噛み締めるようにギュッと拳を握った。



「…コレット、ロイド、ジーニアス」

「「「!」」」

「………此れからヨロシクな」



名前を呼ばれて一瞬キョトンとした三人であったが、青年の……否、アシェルの笑顔を見た彼等は直ぐに嬉しそうな笑顔を浮かべた。


- 8 -

[*前] | [次#]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -