ローレライの代行者


「んなっ!?人ぉ!!?」

「…まさか、あれが精霊イフリート…なの?」



ロイドやリフィルが呆然と呟く。ロイドは純粋に人が炎の中から現れた事に驚いており、リフィルに関しては文献で見たイフリートの姿と今目の前にいる者の姿との違いに困惑していた。



「いや、違う……奴はイフリートなどではない」



クラトスが警戒したまま剣を構える。彼等の目の前に現れた青年は、閉じていた瞳をゆっくり開けた。一同が身構える中、青年は一度彼等を見渡し……その視線が一点で止まる。



『ルーク……?』

「「「「「!!?」」」」」



青年の視線の先……自分達の後ろから聞こえてきた声に驚いて振り返れば、そこにサクがいた。彼女の瞳も、自分達同様驚きに見開かれている。

サクから"ルーク"と呼ばれた青年の方も、そんなサクを見て僅かに瞠目している様だ。



「お前がサク、か…?」



私が知る彼より、少し低い声。けど、アッシュより穏やかな声音。そんな彼の声に、私は確かに聞き覚えがあった。



『…まさか……?』



一歩ずつ、歩を進めて前に出ていく。

彼が身に纏う外套、白いコートの様な服、そして何より……翡翠色の瞳と赤い長髪。それら全てに見覚えがあった。



「サクの知り合い…なの?」

『いや、正確には"彼"とは知り合いじゃない。けど…』



間接的には、知っている。勿論、此方が一方的にではあるが。

不安気なコレットに言葉を返しながら、サク自身もどうして?と少し困惑していた。

彼は、"ルーク"だ。それは間違いない。しかし、サクが知っている世界のルークではなく、原作のEDに現れた…ルークとアッシュの間で起きたビッグバンにより二人が統一された"第三のルーク"だ。

しかし、彼がこの場に現れた事にはいくつか疑問が生じる。かつて、二人の間で起きる筈だったビッグバンは防いだ筈だ。その為の予防策だって、サクは施してきた。

…まさか、私が此方に飛ばされた後に何らかの原因でビッグバンが起きて…!?

困惑し、表情を強張らせたサクの考えを察してか、目の前の赤い長髪の青年はフッとサクに向けて苦笑を浮かべた。



「…大丈夫だ。サクのいた世界でビッグバンは起きていない」

『(!チャネリング……どういう事?)』

「悪ぃ、詳しい説明は後でする」



彼はそれだけサクに伝えると同調フォンスロットを切り、未だ警戒した様子の一同へと視線を向けた。



「俺は、この世界で精霊にあたる存在の代行者だ。お前達に敵意はない」

「精霊って……やっぱりイフリート!?」



驚くジーニアスに、青年は首を横に振る。



「いや、イフリートではなくローレライという精霊だ。最も、この世界にはいないようだが…」

「ローレライ?…聞いた事が無いわね……」

<<封印は解かれた…>>

「「「「「!」」」」」



リフィルの疑問は新たに聞こえた第三者の声により途中で遮られた。そして、ロイド達は咄嗟にハッと我に返る。

青年の登場によりすっかり忘れていたが、ここにはイフリートの封印を解きに来たんだった。


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