レジェンドヒーローズ
森に異常繁殖した魔物を倒して欲しいという、今回の依頼。治癒術士と預言士の混成師団に回される依頼じゃないだろ……とツッコミを入れたくなるが、残念ながらコレはいつもの事だったりする。第七師団はそれだけ優秀なのだ。んでもって、そんな優秀な師団員達で構成された討伐部隊は魔物討伐任務もサクサクこなしてしまう訳で。このまま順調にいけば、今回も何も問題もなく任務完了となりそうだ。
魔物自体も確かに数は多いが雑魚ばっかりで、全然楽勝じゃないか。と余裕をぶっこいてたら、魔物の群れの中からソイツは現れた。
「な…!?何だこの魔物の大きさは!!?」
「まさか…ぎ、ギガントモンスタァ!?」
アビスに登場したっけ?なんて、表情を引き攣らせながらサクは焦る。いやいやテンパってる場合じゃない。サクや第七師団員達が驚くのも無理は無い。闘技場にもいなかったよこのデカさの魔物は…。
「危険です!お下がりください師団長っ!」
「荒れ狂う流れよ、スプラッシュ…っ、何!?」
「(しかも、堅い…!)」
第七師団員達の譜術攻撃が弾かれた。これは譜術耐性もありそうだ。突如現れた強敵に対して焦りが募る反面、サクの気分は高揚していく。思わずニヤリと笑みが浮かび掛けた所で、いやいや…と、表情を引き締める。今は第七師団員の人達もいるのだ。自分一人で突っ走ってはいけない。
「コイツが群れのボスと見て間違いないでしょう!第五音素に耐性があるから、他の属性の譜術攻撃を試して弱点を探し…」
「!危ない師団長っ!!」
指示を飛ばしている最中に、ギガントモンスターが此方に狙いを定めて突っ込んで来ていた。僅かに反応が遅れたサクは、咄嗟に超振動を使おうとした所で、目の前で閃光が弾けた。第六音素譜術…フォトンだ。衝撃でギガントモンスターの巨体が仰け反る中、続けて魔神剣の衝撃破が地を抉ってモンスターに直撃。この見事なコンビネーションは、まさか…
「サク様!御無事ですか!?」
「馬鹿っ!ボーッとしてないで、今のうちに退避しろよ!!」
「スイレン!シンク!」
「全く。いつ迄も遊んでやがるから、足許を掬われるんだろーが」
「って、アッシュまで!?」
「何で俺だけオマケみたいな反応なんだよ!」
危機的状況下で、現れてくれたのは、シンクに守護役ユリア(勿論中身はスイレン)、そしてアッシュだった。スイレンに関しては、導師の法衣から一度サクの導師守護役の衣装に着替えて来た様子。これ程頼もしい助っ人もいないだろう。が、これでは"当初の目的"が…と、サクは内心焦る。
「よくも俺達を騙してくれたなぁ、"スイレン・シュミット第七師団長様"よぉ?」
「えー、実質騙されたのはアッシュとモース位だよね?」
「うるせぇっ」
魔物の攻撃を避けつつ、アッシュと無駄口を叩いていたら、何時の間にやら魔物が標的をサクからスイレンへと変えていた。魔物の牙がスイレンに迫るのを見て、サクは咄嗟に彼女の名を叫んだ。
「スイレンっ!」
「はぁあああっ!!」
黒剣を構えた彼女は魔物の攻撃をサイドステップで避けると、魔物の懐へと潜り込み、カウンターを叩き込んだ。スイレンの斬撃に魔物が怯んだ所へ、シンクが音素を纏わせた蹴り技を炸裂させる。その隙にスイレンは一度後退し、体制を立て直すと、再び魔物へと斬り掛かっていった。
「スイレン、大丈夫そ……あ痛たたたたい!シンク、痛いから!それ地味に痛いからやめてっ!」
「さっきから下がれって言ってるのが聞こえないの?それとも下がるのが嫌なら、ボーッとしてないで真面目に戦って貰える?"シュミット師団長"」
「ちゃんとやります!真面目に戦うから耳を引っ張らないでぇええ」
「シンク、その辺にしてあげて」
「!スイレン…っ」
「お説教は目の前の魔物を片付けてからだよ」
「!!?(スイレンの笑顔が恐い…っ)」
えーっと……誰がピンチになるんだっけ?あぁ、私の事だったのか。なんて冗談はさて置き。若干涙目になりつつ、武器を構え直したサクは、やや八つ当たり気味にギガントモンスターへの攻撃を再開するのであった。
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