03

公爵家襲撃

逆行したせいか、何だか自分の性格が長髪だった頃に些か戻ってる気がするな……まぁ、アニス辺りから「卑屈反対!」って言われないから良いかもしれない。

あ〜、けどこの時の皆はまだ俺がレプリカだって事も知らない、赤の他人だから……そもそも言われる事も無いのか。ガイもそうだったしな。そう考えたら何か、切なくなってきたな……此れからティアに会っても、ソイツは俺の知ってるティアとは違うし。

必ず帰ってきて、と果たせぬ約束を交わした時の事を思い出し、ちょっと……否、かなり泣きたくなった。



「ルーク、考え事をするな」

「(あーもーやってらんぬぇえー…)」



ヴァンから稽古を受けるとか…しかも真剣勝負ならまだしも、初歩的な剣術の指南……逆行してきた為に己のレベル的にもやってらんぬぇえー。先程の思考で全てにおいてやる気が一気に下がり、思わずため息が溢れた。

いっそ今からでもナタリアと伯父上に「実は俺、ルーク・フォン・ファブレのレプリカなんだぜ☆」って暴露して来ようかな。犯人は髭で、本物のルークはダアトにいる鮮血のアッシュだから!って具合に。

その後どうなるかなんて知らねーけど。俺は悪くねぇ筈だ。きっと。



「トゥエ レィ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ…」



そんなこんなで一通りの訓練を終えた頃、屋敷内に響いていた歌が中庭にも聞こえてきた。第一譜歌の効果で身体の自由が効かなくなり、中庭にいた面子が眠気に襲われる一方で、ルークはと言うと「(あぁ、来たのか)」と、懐かしさと切なさを感じていた。



「ようやく見つけたわ。……裏切り者ヴァンデスデルカ。覚悟!」



そして屋敷の屋根の上から現れたのは、マロンペーストの美しい長髪に、武器を携えた女性……ティアだった。ルークにとってはこれまた懐かしさが込み上げる台詞と共に、彼女は武器をヴァンに向けて構えた。



「覇者の天駆を煌めく神々の歌声、クロア リュオ クロア ネゥ トゥエ レィ クロア リュオ ズェ レィ ヴァ…」



……ん?これって、第六音素譜歌…だよな?あれ?確か……この時のティアにはまだ使えなかった筈の技だ。


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