廻るカルマ 旧6頁目



「お前がヴァンを討ち損じた時は、俺が這ってでも奴を殺すがな」

「……分かった。俺、必ず師匠を止める」

「止めるんじゃねぇ!倒すんだよっ!」

「分かった……」



ケテルブルクの街中でアッシュとルークがそんな約束を交わした、早朝の事。彼らのやり取りを影から微笑ましく思いながら見守っていたら、話を終えて此方に戻ってきたアッシュにいきなり斬り掛かられた。勿論避けたけどね。



「覗き見とは、良い趣味してんじゃねえか」

『いやあ〜それ程でも?』

「ほめてねえよ!!しかもマジで照れてんじゃねー!!」



額に青筋を浮かべながらも、諦めて剣をしまうアッシュに、サクは持ち前の演技力を持ってして全力でボケ返してみせた。その甲斐あってか、アッシュの顔がやや赤い模様。いやはや、アッシュをいじるのは実に面白い!ボケ甲斐もあるし。



「……ねぇ、いつまで二人で馬鹿やってる気?」

『ん?シンクも混ざる?』

「遠慮しとく。…そんな期待に満ちた目で見ても無駄だよ」

『チッ』


若干不貞腐れている様子のシンクに内心苦笑する。アッシュには感謝して欲しいものだね。私がシンクに予め待ったを掛けていなかったら、アッシュが私に剣を向けた点で速攻でシンクのカウンターの餌食になっていた事だろう。冗談ではなく、マジで。

ていうか、別に覗き見をする為だけにこんな朝も早くからアッシュをストーカーしてきた訳ではない。アッシュのお見送りと、もう一つの目的は、


「あっ!サク見ーつけた!!」

『!フローリアン』



再会の際には毎度恒例になりつつある、此方に向かって飛び付いて来たフローリアンを、サクは何とか受け止める。勢い余って二人でグルグル回ってしまうのはご愛嬌。倒れない為に勢いを流してるだけですよ。中身は子供でも身体は大きいからね。

そんなハイテンションなフローリアンに続いて現れたのは、我等が麗しのノワール姐さんだった。今更ながら、アリエッタも連れて来てあげれば良かったかな。早朝だから起こすのも可哀想かなーと思ったんだけど。



「アンタに会うんだって言って聞かなくてね」

『あらら…フローリアン、ノワール達の言う事は聞かなきゃ駄目だよ?』

「う〜…でも、サクに会いたかったから…」

『…まぁ、その気持ちは嬉しいから、お礼は言うね。…有り難う、フローリアン』

「!」



パァッと花が咲いた様に笑うフローリアンに、サクもつられて笑顔になる。この子のこういう素直な所はとても可愛いと思う。本人に可愛いよ、って言ったら拗ねるから言わないけど、そういう所も可愛いよね。イオンとはまた違うタイプの癒しだ。しいて言うならアリエッタと似た癒しのタイプ。


フローリアンは純粋無垢過ぎて、緑っ仔達の兄というより、むしろ末っ子に見えるよね。ちなみに長男はクロノで、フローリアンが次男、シンクは三男でイオンが末っ子というのが、サク的緑っ仔家族構成。ちなみにクロノは父でも家長でも可。



「何でテメーらがここにいんだよ」

「相変わらず冷たいねぇ。アタシ等はアンタの足が無いって聞いてわざわざ来てやったっていうのに」



ノワールの言葉を聞いたアッシュに、ギロリと睨み付けられた。何故だ。私は別に余計な事をしたつもりは無いぞ。

ラジエイトゲートに向かうには、アルビオールが必要不可欠だ。しかしながら、現在アルビオール2号機はルーク達が、初号機は私達が利用中という状況。そんな折に最近アルビオールの3号機が復元出来たと風の噂で聞いたので、今回早速依頼した次第である。



『導師サクの粋な計らいをそんな目付きで返すとは』

「今のテメェは守護役ユリアだろーが」

『ならば尚更私を睨むなんてお門違いな』

「他人の挙げ足ばっか取ってんじゃねぇ!!」



そのうち頭の血管がブチ切れるんじゃないかって勢いのアッシュと軽く戯れつつ、チラリと隣にいるシンクへと視線を移す。と、バチリと見事に視線がかち合った。はい。巫山戯ててごめんなさい。



「僕に会わせたい奴がいるって……もしかして、コイツ?」

「ムッ、コイツじゃなくて、フローリアンだよ!僕はシンクとイオンのお兄ちゃんなんだからね!!」

「は?兄ってどういう……あぁ、そういう事」



あまり思い出したくない記憶を思い返してか、シンクの眉間に思わず皺が寄る。それはアッシュの専売特許だよ〜と突ついてやろうとしたらやっぱり睨まれた。何だか今日は早朝から睨まれてばかりだ。少し泣きたい。


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