LEVEL UNKNOWN

花の街ハルルへ向かう前に通ったデイドン砦で、俺達は運悪く魔物の大群に遭遇し、足止めをくらっちまった。

帝都の奴等に見付からないよう、なるべく目立つなって言っていた矢先、エステルが門の向こう側に取り残された人達を助けに走り、しょーがねぇから俺とラピードも協力して、何とか取り残されてた奴等を助ける事に成功したんだ。

門の内側に全員避難できたのを確認して、再び門が閉まり始めたんだが……その時、俺達が助けた女の子が人形を落としたと言って泣き出した。

門の向こう側を見ると、確かに人形が地面に残されたままで。だからといって、今から取りに戻るには既に門は閉まり掛けている上に、魔物の大群も目前にまで迫ってきており、かなり厳しい状況だった。

そんな中、それでもエステルが衝動的に人形を取りに戻ろうとして、危ないから代わりに俺が行こうとした時だった。



「!ユーリ…!!」

「!」



誰かが人形を拾い上げて、俺に向かって投げてきたんだ。かなりの距離があったにも関わらず、人形は俺達がいる所まで届いた。エステルが驚きの声を上げる一方で、咄嗟に人形を掴んだ俺自身も驚いた。

混乱しながらも、もう一度ソイツの方を見ると、もう一人、誰かが傍にいる事に気が付いた。けど、二人とも此方に向かって走って来る様子は見られない。

何やってんだよアイツら……まさか、あのまま死ぬ気か!?助けに行こうか迷ったが、今からではもう無理だと悟った。

しかも、門が閉まる直前……最後にソイツは、俺達に向けて親指を立てて、笑ってみせたんだ。



「ユーリ!お二人がまだ…っ!!」

「……クソッ!」



閉門してから数秒後、魔物達が砦に体当たりをしてくる音と振動が辺りに響いた。青ざめた顔色のエステルは、今にも泣き出しそうな顔をしている。ユーリは無力感に苛まれ、己の拳を閉ざされた門に悔し気に打ち付けた。全く見ず知らずの他人とはいえ、流石にコレは後味が悪い。

誰もが、二人の生存は絶望的だと感じた最中……門の向こう側から、突如轟音が立て続けに響いた。魔物の悲鳴の様な鳴き声も聞こえて来る。

完全に閉まった門の前から動けずにいた俺とエステルは互いに顔を見合せ、急いで砦の上へと続く階段へと走った。

そこから見降ろした地上では、かなり信じがたい光景が繰り広げられていた。



「連撃行くよ!疾風雷閃舞!」

『断罪の剣は寄せては返す南海の楔。沼地の虹は知の追求者を照らし、峠に七光の輝きをもちて降り注ぐ』

「これでとどめだぁッ!はあああああっ!アカシック・トーメント!」

『プリズムソード!』



マジかよ…!?アイツに迫って来てた魔物達が、最後の大技の一撃で平原の主諸とも全部蹴散らしやがった。

何者なんだ、アイツら……あんなの有り得ねぇだろ、普通。平原の主を、魔物の群れも纏めてたった二人で撃退しちまうなんて……いくらなんでも強過ぎる。

しかも、そんな奴等が…



『エステルはフレンに身の危険について知らせに行きたくて、ユーリは魔導器泥棒を追ってて、ケロルはエッグベアの爪を探し中……君達面白いね』

「ちょ、僕はカロルだよ!?」

「あ、フレンなら僕ら会ったよ」

「え、本当ですかシンク!?」

「残念ながら、此処に来た時には気付いたらはぐれてたけどね」

「そうですか……」



今俺達の目の前にいたりするのは何故だろう。いや、有り得ねぇだろ、マジで。


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