03

*-*Side Mitsunari*-*



第五天の話を聞いてやるのを、弥月は好んでいた。
暇があればあの女の元へ行き話を聞く。


それは、私の元へ帰ってきてから一日も欠かさずに行っていたことだった。


弥月曰く、「かうんせりんぐ」という治療らしい。

第五天は心を病んでいると・・・


私のときもだ、と言っていたが


まぁいい、


問題は第五天が言っていたことだ。
弥月をこの世界へと連れてきた張本人。


それは感謝している。

だが・・・



「猫さん、猫さんはお家に帰らないの?」



そう言ったとき、弥月の表情は、苦しげに歪んだ。
ほんの一瞬・・・ほんの一瞬・・・だが、


やはり、元は平和な世界に居たのだ、
親も・・・家族も・・・きっと・・・



「(弥月も・・・帰りたいだろうか・・・)」



あいつは・・・私を救ってくれた。
それは感謝すべきだ。

無論、あいつを平和な世に戻してやりたいとも思っている・・・だが・・・私は



『今、私たちが見てる星の光は、ずっとずっと、それも100年も200年も昔に輝いたものなんです。

 星の距離の単位は1光年って言って、1光年離れていれば1年・・・
 400光年離れていればその光が観えるのは400年後。

 今、輝いた星は、未来の・・それも400年後の私が見ているんですよ。』




弥月は、何を思ったのか星の話をした。

それは、この世界がひとつに繋がっていると、言いたかったのか・・・


寂しげに笑い、そして空を見ている。


きっと私は依存しているのだろう。
いつか、伊達が話していた・・・猫は死に場所を捜し求めると。


その言葉が、恐ろしかったのかもしれない。



だが、弥月には、帰る場所がある。



けれど、私は弥月を手放したくない。

そう思う私のこの気持ちはきっと家康の説く絆とは異なるものだろう




「弥月・・・」



私が、お前を縛り付けているのか?




執筆日 20130504


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