04



初めて見たときには衝撃的過ぎた、焼けた野原。


アスファルトも家も電柱もない。

上がる煙には疑問を抱いた。

事故にあったと思ったのに、なのに私は生きていて、私を助けてくれた人は血を吸った服を身に纏っていた。

それが、三成さんなのだけれど・・・



でも、もうあれは随分と昔の話しなのに、酷い鉄の匂いが鼻につく。



何時までたっても、慣れない匂い。
できれば、もう感じたくなかった戦場の威圧感。


多分、それよりもずっとずっと重いものだろう。



『ありがとう、鳥さん、』



バサリっと木に止まった大きな鴉に向かって佐助のように言った
馬から下りて、そしてその木に繋ぐ。

この子は借り物だから。



くるり、と身をひるがえして、首にかかる赤い宝石に触れた。
唯一、あの人と繋がるもの。




歩いて、歩いて、

元、戦場のど真ん中にたたずむその人の元へと、歩く。


クルリ、っと振り返ったその人の目には光は無い。




『お久しぶりです、
 とはいっても、数日振りですが。』



家康は、どんな気持ちだったのだろう。

どんな気持ちで、三成さんに声をかけたのだろう。

私には分からないけれど、でも・・今は関係ない。



「半兵衛様の真似事か・・・」

『いいえ、私はあの方から言われたことを、刑部さんが作ってくれたチャンスを、私を此処に連れてきてくれた人の願いを、


 彼等が望んだ人への光を、無にしたくない。』

「・・・なに?」




ちゃりっと、首にかかる金属が小さく音をたてる。
ぎゅっと、腰に刺さる政宗の刀の柄を握った。



『私は、家康の代わりになんてなれない。』

「・・・」

『刑部さんや半兵衛様のように三成さんを支えることも秀吉様のように強く輝くことも出来ない、

 でも、』



シャッと、鈍く輝く刀身を、鞘の中から解放つ。
いつもは雷を纏うはずのその刀は、なんの力も示さないけれど、



「・・・私と殺る気か?」

『アナタを止めるためならば。』



勝てるなんて、思っていない。

三成さんの剣術は噂によれば軍神・上杉謙信よりも早く鋭いといわれている
定かではないけれど

私は特別早いわけでも、重い一撃を放つことも出来ない

家康のように、表に力を出すことも




所詮、刀は囮なのだから





執筆日 20130427
 

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