02



泣いた、泣いた。
心がずっと、貴方に拒否されて、心細くて泣いていた。

でも、私には大切な役目があった、

すがるだけじゃない


家康のように、否、それ以上に明るく、暖かく、三成さんを支えて照らす、大切な役目。



『お市さん、ありがとう。』



まずは、感謝を。

それはいつも家康が言っていたことだ。


私の言葉に微笑んだお市さんは私を夢の中で刑部さんとうまく会わせてくれたように思える。

身体を起こして、歩き出す。


左手には、昔のように銃はないけれど、それでも、私には別のものがある。




声のする方向をたどって、そしてスパンっとその部屋の襖を開け放った。
そうすれば驚きの瞳で私を移し、4者4面の表情をする。



「弥月、どの・・・」

『あ、真田、かの戦では真ありがとうございました、
 石田三成に代わり、御礼を・・・武田信玄公の病はいかに?』

「う、うむ、お館さまの体調もすこぶるよいぞ!
 弥月殿の秘薬のおかげだ、だが・・・」

『私は大丈夫です、』



それからスッと、姿勢を正して座って彼等を見た、
一番に名を呼ばれたから、一番に真田殿にはそう言ったけれど、次に視線を向けたのは、佐助。



『佐助、三成さんが今、どこにいるか知ってる?』

「え、石田の、旦那?」

『うん、会いに行く。』



しっかりと言葉を紡ぎだされれば、佐助は驚いたように目を見開いた。




「あいつなら、今頃三河だな。」

『政宗・・・』

「だが、テメェを行かせるわけにはいかねぇ。」



けれど、私の問いに答えたのは、佐助ではなく政宗。
三河・・・って言うことは武田に近いのか。

だったら頑張ればすぐにつける。
けれど言われた言葉に、静かに政宗を睨んだ。



『なんで? 主の下に戻るのが、家臣の役目でしょ。』

「No、cool off 今のアイツはただの凶王だ。」

『これ以上、三成さんから何かを奪うつもりなら私は許さない。』

「違うよ、弥月ちゃん。
 石田の旦那は、壊れたんだ、各地で罪も無い人々を斬ってる。

 これからの日ノ本を支えて行くには、弥月ちゃんの考えが一番なんだ、だから」

『私が今まで出してきた案は全部半兵衛様との笑い話。』




どんなに反対されようとも、私は構わない。
それに、たくさんの血に、三成さんが濡れていたのは元から。

私だって、血に濡れてる、



『私は、家康よりも暖かい光にならなくちゃいけない。』

「!」

『三成さんや、日ノ本をしっかりと明るく照らす、太陽。』




「・・・だろうな、」

「弥月殿なら、そういうと思ったでござる。」



へらりっと笑った。
そうすれば、小十郎さんが横にあった何かの箱を前に出す。
キョトンッとしてしまったが、彼はその箱のふたを開けた。


白の、学ランに似た懐かしいその戦装束
それに、目を見開いてしまった。



『それ・・・』

「昔、奥州に来た竹中が忘れてったもんだ。
 お前の元の戦装束は使いもんにならねぇだろう。」



ふわり、その装束を手に取れば掠めるのは懐かしい香の香り。
なんて思っていたら、目の前にがちゃんっと音をたてて放り出されたのは、刀。



「貸してやる、竜の爪をな。」

『政宗・・・』

「武田騎馬隊の馬ならば三日は持ちましょう、お貸しいたす。」

『真田・・・』

「だが、あくまで貸すだけだ。」

「絶対に、帰ってきて、一緒に日ノ本の明日を、拝みましょうぞ。」



それから、言われた言葉に目を見開く、
二人は笑っているけれど、



「本当は俺様も、ついて行きたいところなんだけどな、
 ね、弥月ちゃん手、かして。」

『え?』

「かってに借りててごめんね。」




けれど、佐助が私の手を取り、そして左の手首につけたのは、水晶。
刑部さんの、くれたもの。



「大谷の旦那は、きっと呪をかけたんだよ」

『のろい?』

「そ、のろいってね、元々はまじないだったんだよ。
 それが悪い方向に行って呪詛になった。

 でも、弥月ちゃんに大谷の旦那がかけたのは良いのろい。

 だから、生きて返ってきてよね。」



言うことは皆一緒だ。

だから




『猫が帰るのは、家ですから、』



執筆日 20130425


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