01
「やれ、やっと目覚めよったか。」
『遅くなって、ごめんなさい。』
明るい光に包まれたその場所に、彼と私はいた。
業を背負った、私のよく知る姿で。
「主には、まこと振り回されてばかりよ」
『でも、私をずっと助けてくれたのは刑部さんでした。』
「はて、なんのことやら」
くすくすと笑ってしまう。
『私は、豊臣を導けませんでした。』
「・・・」
『でも、天から来た猫は、本当は豊臣を導くんじゃないんです。
たった一人の人を、光へと、未来へと導く刃なんです。』
「ヒヒ、やはり主はおもしろい。」
でも、それでも私は彼のそばに居たい。
導く刃と称された私の一番の願い。
刃の存在理由は、彼につく闇を、祓うこと。
『刑部さん。』
「あい、分かっている、主の言いたいことは
やれ、進めススメ」
にこり、笑って踵を返す。
もう、振り返りはしない・・・
ただ、歩く、歩いて歩いて、
『っ私は、』
彼のそばにありたい。
執筆日 20130424
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