05
『・・・』
寒いと、思った。
あぁ、寒さを感じるというのならば、私は生きているのだろうか。
夢の中の刑部さんの言葉が、離れない。
彼さえも、「光」と言うのだろうか。
外が暗い。
今は夜だろうか・・・
ここは、どこだろう。
大阪城では・・・ないのだろうか・・・
覚えているのは・・・三成さんが私に刀を振り上げたところまで。
その前に、誰かが助けてくれた・・気がするのだ・・・
身体をゆっくりと起こす。
刺された箇所が痛いし・・・体がだるい・・・
『誰か、いる?』
小さく、呟くように言えば、カタリっと小さな音がして天井が少し開いて人が降りて来た。
黒頭巾・・・忍。
『ここの城主・・・呼んできて。』
そういえば、シュンッと消える。
苦しくて、少し寝着をはだけさせて、傷を見る。
包帯で巻かれているから分からないが、うっすらと血がにじんでいる。
まだ傷がふさがっていないんだろう、あまり日はたっていない・・・ということだ。
考えに没頭していればどたどたとうるさい足音。
シャッと勢いよく障子が開いた。
そこに居たのは、蒼。
私のよく知る、龍。
「弥月!!」
『・・・何・・・』
私の名を呼び、そしてずかずかとはいってくる。
それから右肩を押して、私を布団に戻した。
怒ったようなけれど、ホッとしたようなそんな表情をしている。
その後ろから小十郎さんも見えた。
ということは・・・ここは奥州だろうか・・・。
でも、何故?
私は大阪城にいたはずなのに・・・助けてくれたのは彼等なのだろうか・・・。
「よかった・・・っ」
けれど、吐き出されたその言葉に含まれていたのは、安堵。
視線を小十郎さんに向けてもそうだ。
何が・・・何が・・・よかったんだろうか。
私は、必要ないのに、「生きて」しまったのに。
「弥月、お前もう『なんで、生かしたの?』・・・!」
政宗の言葉に重ねて、そう言った。
ゆるり、と視線を政宗へと戻し瞳を見れば驚きに見開かれている。
『私は、三成さんから必要とされて無い。
だから、殺されたの。
なのにどうして助けたの?』
呟くように言えば、彼等の表情が歪む。
ねぇ、どうして?
『私は・・』
生きているんですか?
必要とされていないなら、生きている意味なんて無いのに。
執筆日 20130417
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