04
さわり、
風がなびく、広い草原、綺麗な景色。
でも、私は心をしらない。
『・・・』
誰も居ない。
私だけ。
空は酷く澄みきっていて、私の心を焦がしていく。
首からかかる赤の宝石が風に揺れた。
そういえば、と、首からかけていた刑部さんがくれた水晶に触れるけれど、もうなかった。
あの時、熱くなって光った気がしたけれど・・・
あれ、あの時・・・
あの時・・三成さんが、私に・・・
そっと左肩に触れる。
痛みはない。
私は、死んだのだろうか・・・?
「・・・主は・・・」
『?』
後ろから呼ばれて、首だけ振り返ればそこに居たのは、手首や腕に包帯を巻いているけれど、声や口調は懐かしい、知らない人。
だれ・・?
「あぁ、我が分からぬか。
大谷よ、大谷吉継・・・今は紀之助というが」
『・・刑部、さん?』
「それでもヨイ、よい」
けれど、言われた言葉に、酷く納得してしまった。
あぁ、あれは死んだから。
そういえば、前に死んだときは、闇につつまれたきがする。
光に包まれたから、死ねる?
刑部さんの病が進行していないのは、彼が望んだ姿だからだろうか?
「三成は、狂って主に手をかけたか」
『・・・』
「弥月・・・主は、堕ちてはならぬ。」
あぁ、でも、
彼は何を言っているだろう。
ぼぅっと、顔を上げて、彼の目を見れば変わらない月蝕の瞳が私を映す。
本当に、どうしてだろう。
さわり、また風が吹く
「堕ちてはならぬ、ならぬぞ、弥月 主には、やるべきことがある。」
『・・必要とされて無いのに・・・?』
堕ちて、いけない。
私にはやるべきことがある。
そういうけれど・・・。
私はただ、三成さんと一緒に居たいだけ
支えたかっただけ
支える振りして、彼が生きていることが、私を支えで・・・すがって、また、繰り返して捨てられて
ただの、理由だった。
でももう・・・
『生きる意味なんて・・・』
ないんです。
また、さわりと風が吹く
「・・・何ゆえ、光は心の闇を好む。」
『・・・?』
「・・・まだ、話せぬ。ハナセヌノよ・・・
ナァ、弥月。
三成を裏切れば、末代までたたってやるぞ。」
だんだんと、刑部さんの周りから侵食する闇に、視界が染まって行くけれど
ふわりと淡い光だけが、
私の身体を包み込んでいた。
執筆日 20130416
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