03



戦線を離れて、走る。

確か、風が通って行ったのはこっちの方だ。

なら、こっち・・・のはず。



『・・・なに・・・これ・・・』



なのに、私の目に入ったのは、地獄絵図。
船の元の色はすでに分からない。

血が広がって、敵も見方も・・・



倒れている・・・これは・・・一体・・・




「あっれー、まだ生きてる子が居たのか。」



バッと振り返れば、そこには、闇。

聞きなれない声


否、聞いたことも無い、


タタタッとそのまま後ろ向きで走って船の壁に背をつける。
背後は、取られたら終りだ。

この隠れ方は・・・忍・・・?



ズッ・・・




『っ!』



その闇の中から、まるでそこに別の空間があるように、夕日色の髪がゆれた。
そして手に持っているのは大手裏剣。

敵・・・?

かちゃりっと銃を構える。

そうすれば、きょとんっとしたその男。
けれど、まるでヨーヨーのようにそれを回すと、ちゃきっとキャッチした。



「へぇ、アンタが隠し玉ってわけか・・・」

『隠し玉かどうかは分からないけどね・・・』



それから、まるで、何かを探るように、私に言った。
隠し玉・・・なんて大それたものじゃない。

私は、私なのだから・・・



「あんた、名前は?」

『名乗らない奴に名乗る名など無い。』

「てっきびしぃ!
 忍が簡単に教えるわけ無いでしょう?」

『何?暗殺?
 これだと明殺じゃないかな?』



名乗るほどでもない。
今は、仮の総大将。

だからしゃんっとしていなくちゃいけない。



『残念だけど、此処にあんたの思うような人はいない。』

「あっそ、でも、」






アンタの首もって帰るのも、いいかもね。




シュンっと、その瞬間目の前に迫った、闇、

ぎらついた銀


引鉄をいまさら引いたところで、射程距離は、とうに過ぎている。
勿論、近すぎるという意味で・・・

でも、近ければいいこともある。






「っと・・・あんた、暗器ももってんの?」

『さぁ、』

「まぁ、君は謎の多い子猫ちゃんだからね、弥月ちゃん。」



喉元に突きつけたのは、手袋に仕込んでおいた鍵爪。

それに、ぴたっと、動きを止めた目の前の忍はへらっと人懐っこい笑みを浮かべる。
知ってるじゃないか、私の事。



けれど、そのときだ


ひらりっと、私の目の前を黒い羽・・・



私が追っていた、それが落ちて来た




執筆日 20130313


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