05



対峙する、光と闇。

二人の間には沈黙と、苦しいほどの殺気が張り詰めている。

口を挟むものは居ない。

彼等を中心に、転がるのは物言わぬ骸。



「どんな強固な軍を築いても・・・どんな綺麗事を嘯いても・・・私はこの目で見ている。」



その静寂を破ったのは、三成だった。
三成の右腕が持ち上がり、その右手で己の目を隠す。


「家康・・・貴様の罪を・・・ッ!」



その手が滑るようにおちた。
そして、三成の綺麗な瞳から流れるのは、血色の涙。



「三成・・」



家康の、三成を呼ぶ声は、静かに響く
地面を鞘で示した三成

それは彼の、合図。



「さぁ、秀吉様に頭を垂れろ。
 許しを望んで希え、そして首を刎ねられろ。」



静かに、その言葉に答えるように言われたのは有無を言わせないその言葉。
再び、二人の間に走る沈黙。

一度ふせた瞳、深く息を吐き、家康は三成を見据える。



「儂に、そのつもりは無い。」



ブツッ

何かが切れる。

最期の絆の糸。

三成の怒りが、憎しみが、哀しみが・・・

音をたてて、あふれ出る。



「・・・貴様は昔からそういう奴だった!
 己の野望を「夢」と言う言葉で飾り立て、秀吉様の天下を汚したのだ!」

「それが儂の決意だ! 三成!
 お前にも、秀吉にも、天下は譲らない!」



怒りに身を任せ、叫び、闇を纏う。
           そして夢に誇りを持ち、誓い、光を纏う。

三成の目にも、家康の目にも、揺らぎは無い。



「貴様はそれで満足だろうな!
 だが、私は貴様にすべての絆を奪われた!
 どうやって生きたらいい!
         どうしたらよかったんだ!」


その言葉を聞いた家康が動く
スッと、構えられるのは敵へと示す、その構え。

三成も、刀の鞘に手を載せ、握る。



「ならば三成、力の限り儂に立ち向かえ!
 負けるものか・・・ 何があっても譲らない!

 平和な世は、大切なものが失われない世を儂が作る!

 


 その力の源こそが・・・」



バッと、家康の足が力強く地面を蹴った。
どちらかの終焉への最期への・・・















「揺るがぬ絆だ!!!」





「私は秀吉様の為に生きている・・・貴様も豊臣の一員だ、そう生きろ」


今とはありえない、やや和やかなその声色。


「何言ってるんだ三成。
 誰のためでもない、お前はお前の為に生きろよ。」


諭すように離す青年。


「貴様なら私の心を分かると思ったのに・・・もういい、貴様など知るものか」



己のいいたいことが伝わらないのか、機嫌を悪くする友も



「それくらいで怒るなよ。」



ソレをいさめる友も・・・





「消えろ!どこかで野垂れ死ね!!」



助けろと願っていない仲間に



「そんなこと、平気な顔で言うなよ、三成」



護りたかった絆に








「腹を割って向き合おう!
 絆を告げるものとして、この絆に挑む!」


「腹を暴いて食い破るッ!
 大罪よ!循環して息の根を止めろッ!」






もう、面影など…無い。



執筆日 20130408


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