03

*-*Side Ieyasu*-*



儂は、間違ったことをしていないと、言い切る自信は無い。


絆、絆、絆、


偽善だと分かっていても、儂は戦の無い世にしたかった・・・
わかっていたんだ・・・儂はずっと・・・

独眼竜には言われた。

こんなこと、するべきではないと、

片倉殿にも・・・


けれど、儂は儂の思いを、信じるものを・・・ 護って生きたい。



「いよいよ、このときがやってまいりましたな!
 我等一同、力を尽くす所存にございます」

「家康様、俺たちもがんばります!」



儂を信じてくれる仲間。
もうすぐ、関ヶ原の地で最後の戦が始まる。

勿論、儂は負ける気は無い・・・
けれど・・・



「皆・・・その前に聞いてくれ。」

「はっ、なんなりと」





・・・失われる大切なものが多すぎる世界。



ふと、思い出すその言葉
それが儂を裏切りへとかり出した猫の言葉




雑賀衆はもともと、豊臣時代のとき秀吉殿に仕えていた傭兵だ。
だから顔見知りだったし、彼女達は評価を得て、契約を結べば文句もなくともに

散る。


それが運命というものだろう。



北条殿との同盟。

これは北条殿から誘われたことだった。

しかし、三成の怒りは免れない、それは分かっているはずだ。

老体にこれからの戦は辛いだろう、



「あんな奴に味方するものなんかおらんわい!ざまーみろぢゃ!」



警告のように言えば、返されたのは儂の心を抉るものだった。
あぁ・・・そうだ・・・

三成は西軍。

そしてあの性格が災いして、きっと・・孤独の中にいるのだろう。
だが・・・三成には光がある。

儂でさえまぶしすぎる永遠に離れない光が・・そのそばに




元親が西軍に言ったと聞いたとき、酷く驚いた。



元気にしているだけよかったが、久々に来た元親からの手紙は宣戦布告だった。

本物だとは、思いたくもなかった・・・
何があったのか、問い詰めたかった・・・
 
けれど・・・元親らしい選択。

元親の心は広い男だ。
傷ついた人間を見逃さない・・・影で損するものをちゃんと見ている、


きっと・・・元親なら三成を分かってくれると・・・信じた。

だが、ぽっかりと、心に穴が開く。

笑った。
泣くよりは、いいだろう。



そして先々金吾にだした手紙の返事も宣戦布告だった。


それに、驚いたが、三成に咎められたのならば仕方が無い。
三成らしくて思わず笑ってしまったがまた、心を孤独に曝されたのだろう・・


弥月は・・・どんなに暴力的でも・・・三成のそばを離れないのか・・・




真田の元に向かったとき、儂は一つの絆が崩れるのを見た。
信玄公・・・師と仰ぐあの人が病に倒れ、そのとき儂は武田と戦をしていた。



「真田・・信玄公の具合はどうだ?」

「貴殿が案ずる筋はなし!立ち去られよ!
 貴殿の力によって衰えた武田・・・さぞや哀れんでいるのだろう!!」



儂は、ただ、己と同じように信玄公の魂を継ぐ・・・虎の魂を継ぐかの若虎に力を貸して欲しかった


だが、真田にとってそれは単なる、愚問としかいえなかっただろうな・・・
そして、真田は石田軍に下った。



三成は、儂のことを殺したいほどに恨んでいる。
そう思うと、酷く馬鹿らしくなった



「最上・・・儂は三成を追い詰めたいわけではないんだ。」



あぁ、こんなことをいう気はなかったんだ。
迷ってなどいない。迷いなどあってはいけない。


笑う、ワラウ。


狂っていたとしても、儂が三成や弥月を狂わせてしまった張本人だ。
儂が変わったことに驚いたのか、最上殿は逃げるように儂の前からきえた。





あぁ、こう考えると儂は酷い人間だ。
三成よりもずっと・・・きっと、儂は罪深い。



「もし、儂のやり方に不満を持つものが居たら・・・西軍に行きたいというものがいたら・・・


 遠慮なくそうしてくれ。」

「家康様、何を・・・」

「どうか・・・三成の力になって欲しい。
 儂からの頼みだ。」



儂の願い。
けれど、皆発するのは否定の言葉だった。


あぁ・・・儂は・・・



「儂は・・・日の本一の果報者だな・・・ ありがとう・・・。」



こんなにも、嬉しいことは無い。


本当は・・・こうやって話せるのが・・三成や、弥月なら・・・どれだけ嬉しかったか・・・




執筆日 20130407


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