06




『これからの為に、少し薬草集めに行かないと駄目だね。』

「あぁ、やっぱりそうだよね。
 鎮痛剤は多いに越したことも無いし・・・」

『うん、それから止血用の紐も欲しいんだよね。』



がさごそと医務室を歩き回る、
それから籠やらビンやらの中のものをチェックしつつ、それぞれ足りないであろう物を言ってそれから紙に書いていく。

必要なときになかったら薬品の意味が無い。
だからちゃんと在庫をチェックしなければいけない



「へー、これ薬草なんだ。」

「『!』」



二人して、ぎょっと天井に視線を向ける。

ぷらーんっとこうもりのようにぶら下がるのは先ほど別れたばかりの夕日色の忍だ。
あぁ、結局名前聞いてなかった。
なんて、そんなことを考えたが、今はそんなこと違う。


彼が手に持っているのは、まだこの時代では薬草としては知られていないものだ。
興味を持つものはわかる。

けれどまぁ、



「ねぇ、何の効果があるの?
 どうすれば薬として使える?」

『忍は秘密主義なんじゃ無いっけ?』

「やだなー、利用するものは利用するよ。
 ほら、早く教えてよ。同盟国でしょ?」



これは、苦笑いものだな。
私にアレだけ攻撃的だった人が、今はこんなに興味を示す。

ため息をつきそうだが・・・いや、ついてるが・・・



「何言ってるんですか! 例え同盟国でも」

『いいよ、歩君。
 むしろ忍である彼らには一番必要なものなんだから。』

「へー、何さ」



くすくす、と笑ってしまう。
歩君はあの葉っぱの効果を知っているから余計だろう。



『毒。』

「・・・へぇ・・・?」

『それはトリカブトっていう植物だよ。
 減毒しないと薬としては役に立たないけれど、効果的には痛みを抑える効果がある。』

「じゃあ、これは?」

『それは毒ゼリ。 
 人にも使えるけど、私は戦のとき相手国の馬の餌にまぜるように忍に頼んでる。
 馬が仕えなければ戦力は一気に落ちる。』

「それ、武田にも使う気?」

『まさか、』 




小さく笑う。
なんで毒草が多いかって、私だって生きるための道を選ぶんだからしかたない。
毒は苦しんでから死ぬ。

だからあまり使いたくは無いのだが、生きるためにはしかたない。

忍の方々には驚かれた。
けれど、医者の心得だといえばスルーされるのはありがたい。



「子猫の本心は猫又だったってことか。」

『なんとでも言えばいいよ。』

「あはー、でも、本当、面白いね。」



ねぇ、他にも教えてよ。


なんていうから、苦笑いしてしまう。

同盟国ならばいいだろう。
それに、彼は忍だ。

でも・・・



『ねぇ、交換条件。
 アンタの名前、聞いて無いんだけど。』



名前、教えてよ。



執筆日 20130403


[ 33/80 ]

[*prev] [next#]
[戻る]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -