05
ふわりっと落ちてきた黒い羽。
そして殺気。
「っ!」
『ひぐっ』
本当は見捨ててもよかったのだけれど、面白い玩具をやすやすと捨てるほど俺様無欲じゃない。
グンっと腕を引いて身体を抱き、鳥さんをよんで空に飛ぶ。
密着するのはしかたない。
どんどん彼女の白い服に俺様の返り血がしみていく。
さっきまで俺様たちが居た場所は攻撃してきた風魔の技によって陥没していた。
「っ風魔!!」
俺様の声に腕の中にいる猫が体を揺らす。
そして、視線だけを風魔に向けた。
風魔は俺様たちを船から見てる。
もしかしたら俺様の腕の中にいるこの子が気になるのかもしれない。
さらさら渡す気はないけれど。
『ふぅ・・・ま・・・?』
けれど、小さく聞こえた言葉にハッとする。
ここの責任者はきっと彼女だ。
俺様も、風魔もこの子の敵。
なのに、敵である俺様に守られてる。
彼女の体が、小さく震えている、
『離せっ!!』
「あばれちゃ駄目だって!!」
そんな彼女の心理状態を俺様が知るよしもない。
ただ、彼女の心情をを思うままに言えば、屈辱だろう。
片手で支えているから、暴れられたら支えている自信が無い。
『うるっさいぃい!!』
そして、忍の耳で聞くには大きすぎる爆音。
焼けるような痛みが彼女を支えている腕に走る。
俺様の腕から滑り落ちる体。
「っ弥月ちゃん!!」
思わず伸ばした手。
その手ではきっと彼女に届かないなんて、分かっていたのに・・・
彼女の手から滑り落ちた銃は船の甲板を滑って行く。
『___、』
そして彼女から言われた言葉に、俺様は目を見開いた。
水しぶきを上げて、海に落ちた体、
けれど、俺様の目の前に来たのは、風魔。
あぁ、くそ、
こいつさえいなければ、あの子を助けられるのに、
『・・・忍が着流しなんてありえないでしょうが・・・』
大将の目の前に、ふわりっとあの子が舞い降りてきた時には不思議な安心感があった。
旦那とは違う、紅色。
淡いその色の着流し。
旦那には呆れるよ。
ただでさえ、忍を人として扱うから、それが普通だと思っているのだと思うのだけれど・・・
でも、さらしを巻いているのか、女らしい格好ではないし、腰には珍しく、あの剣ではなく小刀が差してあった。
大将は女の子だって気がつかないみたいだね。
まぁ、それはソレでよかったけど。
破廉恥ー!!なんて叫んで、彼女から逃げ出したら石田の旦那が面白くないだろう。
だから旦那達が話している間に上から眺めていれば、下から声がかけられて聞こえない程度に苦笑いして下に下りる。
もちろん、顔を近づけて
目を閉じていた彼女が目を開けば、綺麗な目と目が会って、声を上げようとしたであろう彼女の口をふさげばその手に触れられて、手を離した。
っていうのが、さっきまでなんだよね。
でも、この子、近くで見るとやっぱり女の子って感じだ。
初めて彼女の噂を聞いたときは、石田の旦那みたいな子かななんて思ったんだけど、でも、実際にあってみれば、性格は旦那に似てる。
人の命を大切に使っている
「弥月さん!」
なんて、考えていたら彼女を呼ぶ声。
身構えようとしたら、『すみませんが、これお願いします。』なんて、手渡された大将の槍。
渡した本人は濃い紅色のたすきを解いて、襟元をしっかりと正して、立ち上がる。
「ちょ、」
『これから薬の在庫について話し合いに行くんですよ
これでも、私軍医ですからね。』
「・・・軍医・・・?」
慌てて、声をかけたが、当たり前のように言って呼びに来たそのこと歩き出した。
「(人は見かけによらないって・・・)」
こういうことをいうんだね・・・
とても、医者には見えないよ、子猫ちゃん
執筆日 20130402
[ 32/80 ][*prev] [next#]
[戻る]
[しおりを挟む]