09
「やれ、待ちわびたぞ、弥月。」
『いや、はい?え、これ、ちょ、・・・』
なぜか、戦い始めようとした矢先、崖の下へと飛び降りた。
驚いたものの、まぁ、時間稼ぎに・・・なったのかは疑問だが、とりあえず言われたとおり戻ってみれば、そこには、先ほどの金吾と言う少年をいたぶっている三成さんの姿。
・・・や、驚いた。
それを止めることもなく、傍観していた刑部さんの様子から見て、まぁこれが当たり前なのかとは思うけれど・・
当たり前じゃいけないと思う。
え、それ、イジメでしょ・・・
「どうやら、金吾の強気の糧は徳川からの文だったようだ。
徳川に下れとな、やれ、愉快ユカイ・・・」
『・・・家康が・・・?』
「そうよ、家康から仲間になれと、」
『・・・家康が・・ね・・・』
だが、確かに傾いて行く石田軍・・・元豊臣軍にいるよりも・・・これからをになう徳川軍のほうがいいだろうな。
それに、人柄も・・・武器を捨てて・・・というのは、彼が一番実現している。
自ら、武器を捨てて、拳で戦っているんだから・・
ただ・・・
大切な人を奪い続けたんだ・・・・。
「うえーん・・・ううっ・・・うぅ・・・ウエーン・・・うう・・・!」
そんな私の考えが、その泣き声で引っ張りあげられる。
子供のようにボロボロと涙を流している小さな少年。
とりあえず、裏切らない。という結論で終わったんだ。
結局は同盟。ということだろう。
そしたら仮にも同盟相手ってことだ。
『三成さん!』
「! 何をする!!」
『ちゃんと反省してるんだから、あんまり手を上げないでよ。
傘下の軍なんだから、今手傷を負われて戦に影響されたら困る。
でしょ、刑部さん。』
声を張り上げて、刀を止める素手で受け止めるようなかっこいいことは出来ないけど、刀で固めて止めた。
だから、金属のかすれる音がする。
それに重力的には私が勝っていたとしても、男と女の差だ、力を込められれば簡単にはじかれてしまうだろう。
最後に刑部さんの名前を読んだのは三成さんが刑部さんの言うことなら聞くからだ。
「・・・勝手にしろ。」
『はい、勝手にしますよ。
手当ては本業ですから。』
「・・・ふん・・・」
案の定、私の考えは外れていなかったようだ。
刀を下ろした三成さんにホッとして、苦笑い。
それから用件だけをいえば、彼は身をひるがえして歩き出す。
ヒッっと独特な笑いをした刑部さん「やれ、やはり主は面白い」と呟くように行って三成さんを追う。
多分、置いていかれることはないだろうな・・・
置いていかれたらまた馬を走らせないと・・・。
あんま走らせると、馬のほうが哀れでしかたないけど・・・。
「弥月さん!」
『歩君! あ、私の鞄・・・』
ため息を着いて、手首の紐を解いて剣を鞘に収める。
それから、その剣を腰に差してふぅっ吐息をはいてから歩君から私の治療道具の入っている鞄を受け取った。
くるりっと振り返ればびくぅっと金吾少年はおびえる。
けれどソレを無視してスタスタと近づいていけば、ヒィィ!!っとはいずるように私から逃げいて行く。
むしろため息。
それから苦笑いして刀をもう一度腰から抜き、銃もホルダーごと外した。
『歩君、私の荷物よろしく。』
「え、あ、はい。」
見たところ、金吾少年は武器は持っていない。
おびえるのはしかたない、
ただし、私が武器を持っていないという証拠さえ見せれば大丈夫だろう。
鞄だけを手に、スタスタと近づいて、おびえる金吾少年に笑いかけた
執筆日 20130401
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