08



馬を走らせて石畳の道を進む。


嫌な予感がするのは私だけじゃないだろう。


どこか・・・あの目には、何かが含まれている気がしてならない。


名は知らないが、あれは僧侶・・・といったところか・・・格好からだが・・・
だが・・・鎌を持った僧侶なんていないよね。

いや、聞いたことも無いが・・・。



『っ!』



けれど、ふいに香った、何かの香り。
慌てて、口元を押さえたが、空気の色がだんだんと靄のように変わっていく、

なに・・・これ・・・




「ひっ鎧が・・・っ!!」




そして、後ろから聞こえた言葉に、はっとして振り返る。
ぶしゅぶしゅと変な音をたてて泡を発する鎧、それは、私も一緒だ。

金属に反応するのか、熱を持ち始めている銃。


これを失うわけにはいかない。


この煙を起こしているのはどうやらあの変な壷だ。
あれさえ、壊せば


カチャンっ


安全ピンをはずす。
そして馬上から狙うのは複数の壷。

動かなく、そして、大きな的は恰好の獲物だ。


そして、そのまま引鉄を引いた






『撤退しろ。 貴方達を此処で死なせるわけには行かない。』





*-*-*-*-*-*


「おや、来たのはあなただけですか、予想外でしたね。」


石造りの階段を駆け上り、私を迎えたのは、その男。
ゆらり、ゆらりっと身体をゆらし、そして私を見ている。

そしてフワリッと香るのはさっき鎧を溶かしたのと同じ、香の香り。

口元に手を添えて、目を細める。



「あぁ、懐かしき香りだ・・・。
 あの殺戮の日々を思い出させる・・・。」

『・・アンタ、何者?』

「おや、アナタは私を知らないのですね・・・
     いいでしょう、教えてあげます。」



そして、その腐の匂いを懐かしき香り・・・というということは、やはり少なからず腐ったものを・・・死体を見たことがあるということだろう。

確かに僧侶ならお払いとかであるかもしれないが・・・だが、その瞳の中に狂気をうごめかす必要はないだろう。

思わず口に出した言葉に、今度は私ではなく、目の前の男が面白そうに目を細める。


突然手を広げ、鎌を構えた。



「私は天海!
 誰よりも命の価値を知る者!

 ククククク・・・アーッハッハッハッハ!!」



そして、高らかに笑う。
天海・・・天の海・・・か・・・。



『随分、綺麗な名前ね。』

「クク、アナタは本当に面白い、
 あの蛇が例えたとおり、猫は狂っている。ということですか。」

『おあいにくさま、まだまだ私は平常ですけど。』

「それも今のうちだ・・・アナタはあの人と同じ人種のようだ。」

『?』



言葉を言えば、そう返される、

何の意味があるかは知らないが、いわれた言葉に口元から手をどかして、そのまま刀を取る。



『石田軍、戦猫 お相手願います。』





執筆日 20130401


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