02




ヒュンッと顔のすぐ横を数本の矢が飛んでいく。
それを交しながら、ただひたすらに足を前に進めた。



『(話が違くない・・・っ!』



刑部さんから言われたのは、海神の巫に西軍に入るように仕向けるということだ。
だが、それまでに布石は敷いてあるから戦いにはならないだろう、と言った。

全く違う。


普通に攻撃されているのだが・・・



「来ましたね! 許しません! 西軍なんかに入りませんからね!」



そして、聞こえてきたのはそんな女の子の声。
パッと見、同い年ぐらいだろうけれど・・格好がセーラー服っぽいのは私が勝手に思っているだけだろうか・・・

けれど、何故、話が食い違っているのだろう。

彼女のところまでつけばいいだけなのだが、なにせん、多勢に無勢、なるべく人は傷つけたくないから交わしているが時間がかかってしかたない。

最悪、話し合いが出来なかったら海に飛び込めば良いだけなのだが・・・



「孫市姉様からみーんな聞きました! あなた方が悪い人だって!」




ほんっとうに布石をおいたのですか?



『(孫市・・・孫市って・・・雑賀衆の・・孫市さん・・・?)』



でも、聞いたことにある名に、意味が分かった。



雑賀孫市


元豊臣軍の傭兵。

私は一度も会ったことがなかったけれど、雇われ兵士だからお金を払えば誰の味方にだってなるだろう。

確か・・・今は家康に雇われているはずだ。

これは毛利公情報だから間違いは無い。



だったら、こうなることは必然だろうな。

姉さん。なんて呼んでるくらいじゃ相当懐いているようだし・・・




「貴女は大谷さんの使いの人ですか!
 大谷さんに伝えてください! 私は東軍に行きますからね!」



さて、この子はどうしたらいいんだろうか・・・

刑部さん的にいうのであれば




『やれ、困った困った・・・』



いや、本当にこの状況はどうしたらいいのだろうか・・・ 




執筆日 20130321


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