02



「何の利益もなく同盟を組もうなど、そのような戯言は信用できるか。」


海から、安芸の城へと向かって、話し合いに展開すれば、こうなった。
まぁ、仕方が無いことだろう。

向こうも、こちらも、なんの接点もなかったのだ。

・・否、瀬戸内を挟んだ彼等がどうか・・・とは分からないが・・・。

今、この場には居ない毛利元就公が何か仕掛けないわけでも無いだろう。



「アンタも随分とお堅いな。
 ・・・さては、裏切られるのが怖いのか?」



そして、そこ挑発するな。
にやりっと笑ったがその表情は、苦。

裏切られるのが、怖い。

それは、元親にも当てはまることだ。



「俺の信頼を裏切ったのは・・・家康だ!」



発せられたその言葉に、三成さんの後ろで待機していた私は驚いた。
だって、そうだろう。

私は、家康の友好関係を知ることは無いが・・・


あの人たちの怪我は・・・すべて家康のせい・・・ということになるのだから・・・。



「・・何故同盟を組もうと考えた。」



けれど、「家康」という言葉にか、三成さんは睨みつけつつ、言った。
そう、彼もまた、同じなのだから・・・



「家康と戦うためだ。
 家康は俺を裏切り、四国を壊滅させた・・・

 俺は、変わっちまったあいつがどうにも許せねぇ!」


でも、元親の怒りと、三成さんの憎しみは違う。
変わったことで裏切られた、元親と大切な人を殺された三成さん。



「家康と戦うために・・・
 家康のためだけに私と結託するというのか・・・!」



だから、三成さんにはどうしようもなく許せないのだろう。
その声色から怒りが簡単に読み取れる

けれど、元親はその怒りの原因がきっと分かっていない。



「どうした、何を怒っている?」



だから、こういう風にいえるんだ。


多分、友人、親友。
そういう類で形成されていた家康と元親の関係と、


戦友、として戦っていた三成さんでは


大分そういうとらえ方が違う

けれど、何を思ったのか元親は笑った。



「だが、アンタについていきゃ、間違いねぇな。」



そして、三成さんに手を差し出す。

三成さんはその手を見るけれど、その手を取ろうとはせず、そっぽをむいた。
元親は、苦笑い。

彼の性格上、しかたないのだろうけれど。



「それに、アンタが気に入った。
 まっすぐな目をしたあんたが・・・

 それに言われてるほど悪い奴でもねぇな。」



だが、その言葉は、若干禁句だったと思う。



「それを言うなら貴様の目はなんだ!
 その目は、郷愁の目だ!!

 奴を憎むというのは妄言か!」



彼がここまで怒りをあらわにするのは、いつものことだ。
私の隣にいる刑部さんでさえ、ヒヒっといつものような笑みを浮かべている

これで戦いが始まったら私が止めればいいか・・・

元親の表情が一瞬真顔になった


けれど、寂しそうに笑う。



「嘘じゃない。
 だから俺が、やらなきゃならねぇ・・・」


そして、そう言った。
それがきっと許せなかったのか、三成さんはおもむろに立ち上がると、踵を返し、部屋を出た



「弥月、追いかけてやれ。」

『はい、
 じゃあ元親、また。』

「おう。」



そんな彼を見てか、刑部さんが私に言った言葉に、頷き、そして元親に一言そう言って、追いかけるように部屋を出る

こういうとき、三成さんの心はひどく不安定だ。

それは秀吉様を失った思いも含まれている。
彼は、自分のせいだと、ずっとずっと、責め続けているから



追いかければ、彼は中庭に居た。

けれど、私の姿を捉えれば、その目は、また下を向く



「何故、誰もが家康を見、家康を思い、家康を中心に動いている・・・。」

『三成さん・・・。』

「私から全てを奪った貴様に、世界の全てが注がれている・・・ッ!」



そして、彼の手は、剣を抜き、シュンっと一閃した。



「許さない・・・っ私はアイツを許さない・・っ!」



しかたないんだよ。
なんて、私にはいえなかった。

だって、家康は天下人になる。

幕府を開いて、世界を作り上げて行く。


だから、あっちを中心に世界が回るのは、しかたない。



『三成さん、』

「・・・」

『私も、刑部さんも、ずっと貴方のそばに居ますから。
 そんなこと、言わないでください。』



でも、全てを奪ったとか、言わないで。
私も刑部さんも、家康を「裏切って」ここにいるんだから。


あぁ、でも、
もともと刑部さんは、家康のことなんて見てはいなかったね






執筆日 20130318


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