08



元々、頭がいいわけじゃない。

ずっとバカらしいことを考えていたら頭が熱くなって、それで夜風を浴びようと、部屋を出れば、月に照らされた銀色が目にはいった。

それは、私を助けてくれた人であり、私の大切なものを持ってる人だ。


気配を消すことはせずに、ゆっくりと近づけば、彼は私を見た



『長曾我部さん、夜の海は何が見えますか?』



それから、そう聞けば彼はまた、海を見た。
スタスタと近づいて、隣いい?と聞けば、簡単に許可が降りる。

それを確認してしまうのは、仕方が無いだろう。

隣に立てば、夜の海。
不気味だけれどどこか綺麗なそれに、目を細めた。



「なんでぃ、寝てなかったのかよ。」

『あいにくと、私はあまり夜眠らないので。』



そんなことを思っていれば、そういわれた。
夜眠らない。っていうのは結構あっている。

風が、私の髪を撫でて、攫って行く。

それに、目を閉じれば「テメェは変だ。」といわれた。


表情を確認するように目を開き、自分よりも大分身長の高い彼を見上げれば、彼は海を見たままだった。



『そりゃ、軍人ですから。』

「もう隠さなくていいのか?」

『私の剣を持っている時点で気がついているでしょうし。』



軍人。
という言葉に、彼は意外だというように私を見た。
しかたない。だって、彼の手元にそれがあって今思いかせば、「豊臣」と文字が彫ってあったのだから。

もう、ばれているだろう。




「軍人にしても、あんたは変だ。」

『医者って人の目からいろいろ情報を得たりするんですよ。
 私もそう、目に濁りがあったりすれば心が病んでるって思える。

 それに、目を見れば病気の種類が分かったりします。』



私はそういうの苦手ですけどね。

なんて付け足した、

仕方が無い、私はまだ見習いだったのだから。
でも、この時代じゃ随分と重宝できるものだろう。



「そうかよ・・」

『ちなみに、私の剣を返していただけるとありがたいんですが、
 あれ、形見なので。』

「豊臣秀吉のか」

『どうぞ、そこはご自由に。』



けれど、今、私が欲しいのは、ソレ。
大切な愛刀なのだ。

もう、この世には居ない、あの人たちがくれたものなんだから・・・。



「天より来し猫、豊臣を導く刃と成る」

『え・・・』

「お前の刀に刻まれてた文字だよ。」



なんて、考えていたらそういわれた。
きょとんっとしてしまうのはしかたないだろう。

いきなりそういわれたって私には意味がわからないのだから。


けれど、長曾我部さんはそんな私を見て笑う。



「意味も知らなかったのかよ。」

『そういう勉学には疎いもので・・』

「珍しいな。」



そして、言われた言葉に、笑う。

仕方が無い。
だって、古文は苦手だった。

だけど・・・そこまで聞けば・・・





天より降りて来た猫は、豊臣の為に導きの刃と成る





私にだって、分かる。



『天より・・・来た猫・・・かぁ・・・』



なんで、私なんだろうね。




執筆日 20130316


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