07
『刑部さん・・・呆れてるだろうか・・・』
はぁっとため息をつく。
船の上の、個室。
別に閉じ込められている・・・というわけではないのだけれど、膝を抱える。
長曾我部さん曰く、私は拾われて2日眠っていたらしい。
随分と衰弱した、ということだった。
まぁ、そりゃその間ずっと海水に晒されていたら衰弱もするだろう。
それよりも、不安なのは三成さんだ。
これは、裏切りのうちに入るのだろうか・・・
帰ったら怒られてしまいそう・・。
でも・・・
『(長曾我部元親・・・部下の人たちに聞いた限りじゃ・・・小さい頃は姫若子って言われるほど大人しかった・・・なのに、今はあんなに気性が荒い・・・)』
自分を偽るのが、得意なのは、半兵衛様だけで充分だ・・。
ぎゅぅっと、首にかかっている赤い宝石を握り締める。
もうすぐ、安芸につく。
その前にどうにか刑部さんと連絡が取りたい。
どうしたら良い・・・
『なっさけないなぁ・・・私ったら・・』
こんな海の上じゃ、忍の人も来ることは出来ない
連絡は、取れない。
『信じたい・・か・・・』
生きていると信じて欲しい。
できれば、三成さんには私が行方不明だって知らないで欲しい
かれこれ、1週間はこっちに居るんだ、無理な話かもしれないけれど・・・
でも、信じたい。
『此処でいいかな・・・』
「どうしたってんだよ・・・」
『私の本音ね、
私は長曾我部さんの好きにしていいと思うよ。』
ニコリと微笑んで見せれば、長曾我部さんは不思議そうに私を見た
まだ、暗くも無い。
でも、ここには人気が無い。
『その前に、ほら、胸貸してあげる。』
「はぁ!?」
『泣けばいい。 どうせ無駄に高い誇りに押しつぶされて泣けない癖にさ』
それから両の手を広げてそう言って見せればグッと押し黙った。
まぁ、いきなりのことだから・・・
「テメェ・・」
『私さ、やっぱりこういう職業だから、人の心が不思議と読めるわけ。』
「・・・」
『心を病んだら、壊れて行くだけだよ。
別に声を出して泣けとは言って無いでしょ。』
大げさにため息をつけばむっとしたように私を見る。
だから、くすくすと、逆に笑ってしまった。
『いいよ、今だけは、お姫様になってもさ。』
小さく呟いた言葉に、目を見開いて驚いていた彼は、そのまま右目を手で覆ってしまった執筆日 20130315
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