06
*-*Side Motochika*-*
サザン・・・サザン・・・
波の音が静かに耳につく。
波は酷く穏やかだった。
『私はさ、信じたいんだよね。』野郎どもがいねぇところまで俺を連れてきて、俺が拾った女は言った。
笑っちまう。
俺が、たかが女にさとされてんだ。
だが、あの女はただの女じゃない。
キラリッと光るのは、刀身。
月光に照らされて浮かび上がる「天来猫成豊臣導刃」の文字。
「
天よ来し猫、豊臣を導く刃と成る・・・か・・・」
この剣は、あの女を拾ったとき手首にくくりつけていたものだ。
豊臣の猫・・・聞こえはいいが、殺人猫だ
足にはサヤカがつけているよな銃の入れ物、
西洋火器を使いこなし、無邪気に敵を追い回す猫。
あどけなく、けれど残酷
そんな女を俺は拾った。
多少の嘘はついていた。
俺が拾ったという時点で、すでに気がついてはいたが、だが・・・
それでも、己の身分を隠そうとする、女を無理に吐かせる気にはなれなかった
それに、野郎どもの怪我も診てくれたしな・・・
『長曾我部さんは、その人のこと、信じたいんでしょう?』
「って、あいつは元豊臣の人間だ・・・もしかしたらアイツの仲間かもしれねぇじゃねぇかっ・・・」
こんなこと思っちゃいけねぇ・・・
なにより、助けてくれたじゃねぇか・・恩人だろ・・・
だが・・・微笑んだその顔に、柄になく、固まっちまったのはたしかなんだ・・・。
それに・・・よぅ・・・
『長曾我部さんは、部下を不安にさせたくないんですね。』まるで、心を見透かすように、言ったんだ
執筆日 20130315
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