喜多はあれからずっとそばにいてくれた。
箱も、喜多が用意してくれて、小鳥の餌も用意してくれる。
今まで女中がやってたことを、今は喜多が一人でやってくれて、やさしいやさしい、喜多。
でも、喜多はもしかしたら命令されてやっているのかもしれない。なんて、思ってしまうわたしは相当酷い人間だろう。
さっきまでうるさかった小さな命は眠りに入って、静かになってしまった。
『・・・』
そんな部屋の片隅で、蹲る。傍らには箱。喜多は夕餉を作りに行った。毒でも盛られないように・・・とそういっていたけれど、私を殺そうとしていると、知ってる
だったらご飯なんて食べないでいいじゃないか・・・
時間がたっても、私は一人。
ボーっとしたまま、忌々しい右目に触れる。
さっきから視線を感じる。
私を殺すために監視でもしているんだろうか・・・
さっさと殺せばいいのに・・・
そう思って立ち上がって、本棚に手を伸ばす。
この部屋に一冊だけある英語・・・否、今は南蛮語って呼ばれてるそれ。
いっそ誰もわからない言葉でしゃべれば、逃げになるかもしれないと・・・
だけど・・・
『Good Idia・・・』
そうだね、そうだよ。どうせ世界は私を嫌ってる。
だったらずっと、嫌ってればいい。私だって嫌いだ。昔の様に過ごしてしまえばいい。そうすればひとりになれる
『Leave it alone.(独りにして』
小さく呟いて、眠っている鳥の子を撫でる。
鳥の子とずっと呼ぶわけには行かないね・・・
『・・天珠・・・』
小さく呟く。天から落ちてきた宝珠
だからてんじゅ。
いつか、名を呼んだら来てくれるようになるだろうか・・
するりっと、髪紐を解いて、天珠の傍らに置いた。目を覚ましたら、首輪にしよう。
あぁ、でも、家を出るんだから、強くならなくちゃ・・・なんて、思って、泣くように笑った。剣でもいい。でも、ただの剣じゃつまらないかな・・・
−−竜は、決めました
執筆日 20130219