月日がたつのは早い。
あっというまに私は8歳になった。

のつど、部屋の外に出ないから肌は白い。のだが、夜になれば外に出てずっと木刀を握っているから手は豆だらけ…

きっと、昔の私なら忌み嫌っただろう…。今は苦とも思わない。


『天珠。』


木刀を放り出す。カランっと軽い音がすれば、蓋を開けっ放しにしている籠の中から飛んできた一羽のツバメ。

首には藍色の紐。天珠の目印、私の友達。


『You are my best friend・・・I like You・・・』


毎日のように呟くその言葉に、ツンツンっと天珠は私の髪を引っ張る。燕はインコのようにしゃべれはしない。返事は返ってくることは無いけれど天珠は私に答えてくれていると思ってる。


「梵天丸様。喜多にございます。」


そんな時、聞こえた声。
言わずもがな喜多だけれど、その声は少しいつもより固かった


『What…なんのようだ。』
「…輝宗様が、梵天丸様をお呼びです。」


その理由が、すぐにわかる。父である輝宗様が私を呼んでいるということ。幸せは少ししか続かないことを私は知っていた。

だから・・・仕方ない。

天珠を籠に戻して、軽く撫でる。その後に、軽く髪を梳いてから髪を結って部屋を出ればそこは正座をしている喜多の姿がある。


『あの人が何のようだ。』
「いえ、喜多は何も・・・」
『・・・Hum・・・』


でも、多分喜多は知っている。私と目を合わせないということは嘘をついているということだ。存外わかりやすい。子供だからわからないと思っているのだろうか。
まぁ、見た目は子供だからな、仕方ないだろうが。


「参りましょうか、」
『・・・あぁ・・・』


小さく、返事を返して、それから藍色の羽織を羽織って廊下に出た。

人は一切いない。ここは人払いをしている、元々、私は化け物といわれているから近寄る人間もほとんどいない。ひたひたと、はだしで歩く。

はっとしたように、頭を伏せる家臣たち。けれど、それは仮に、私が伊達輝宗という大将の娘だからだ。

でも、今は…弟がいるから、彼らは私なんぞ興味は持っていないだろう。
戦国時代において、女とは政治の道具にしかならない。


『喜多、ここまででいいよ。』



此処からは一人で行くから。

吐き出した言葉。
それに、喜多は驚いたように目を見開いてる。


「し、しかし・・・」
『大丈夫だから。』


8歳の子供がこんなしっかりしていたらおかしいかもしれないけれど、これが私。喜多に作った笑みで笑いかけて、振り返らずに歩き出した。

離れから出て来たのは、約一年ぶりだ。義姫様や、輝宗様に会うのも・・・それくらい・・・

『(いつもどうりの私でつっこんでやろう。)』


知らぬ間に、弧を描いていた


執筆日 20130224



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