怪我を治療して、それからいつきが守ろうとしていた村を見て回る。
今は小十郎含め皆、立ち入って踏み荒らした田んぼや、武器として使われた農具の修理をしている。

それに奴等は驚いていたが、俺たちが壊しちまったようなもんだから・・・


『にしても・・・良い場所だ』


雪が溶ければそれは地下水となって飲み水になる。
近くに森もあるし山もある。こりゃぁ良い米が出来るわけだ・・・


『(、やっぱ自然も大事だよな・・・)』


収益も大事だが、それ以上に民が大事、自然も大事。
無謀な開拓は身を滅ぼすだけだ。

ふぅっと息を吐いて振り返れば、小十郎がいた。その姿は戦装束ではなく、上着は脱ぎ、頭に手ぬぐいというなんとも不恰好な感じだが、よく見る姿に苦笑いをする、


「政宗様、身体を冷やされまするな」
『Don't Worry、気にすんな。あいつらの怪我の具合はどうだ?』
「問題ありませぬ、大体が転んだときの擦り傷と軽い打撲とのこと。しいて言うならば、落ち込みようがどうしようもありませぬが」


そして、こじゅうろうからいわれたことばにため息をつく
まぁ、そうだろうな・・・。


負けとなればただの謀判。つまりは最悪『晒し首』
そんなことする気はないが・・・


『さぁってと・・・小十郎、ちょぃと話し合いでもしようじゃねぇの。』
「・・貴女様の考えはわかっているつもりでした。寺子屋にて、準備してありまする」
『Ha、さすが俺の片腕、充分だ』



だが、こいつ等が苦しむ必要はない。
すこしでも、すこしでも、


『(変われば、いいんだけどな)』










蒼いお侍さん……


寺小屋の中で小十郎と一緒に、話しをしていたら聞こえてきたその声に、持っていた筆をおいた。

視線を小十郎にむければひとつ頷いて、声がした障子へと手をかける。
そのまま静かにひらかれれば、戦中にあった姿とは別の……女の子らしい青い着物に身を包んだ小さないつきがいる。
頭を下げ、ふるえている。


『なんのようだ、snowgirl?』


そんないつきにわざと低い声で声をかける。そうすれば びくりと身体を振るわせた。
私の行動が意外だったのか、小十郎が私を見る。


「お、オラ……なんでもするから…っ だからみんなを許してけろっ」


あぁ、だが
いつきの口から吐きだされた言葉のなんて悲しいことだろう。
ため息をこぼして瞳をふせる。



『あんたの言い分はわかった。もし俺が許すきがなけりゃどうする』
「それは……」
『許すきはねえ』
「っ……」
『お前が頭を下げる、その必要もな』



いつきのあたまが上がる。
見ていてかわいそうなほどにその瞳には涙がためられていて、そして体を起こした反動でそれが落ちた。
いつきの近くまでより、膝をついてその涙をぬぐってやる
意味がわからない というように俺を見上げるいつきをやさしく抱きしめた。


『俺はもともとおこちゃいねえさ。だからあんたがゆるしをこう必要ねえっていってんだ』


それから言い聞かせるようにそういって、『こわかったな』と、やさしく頭をなでてやれば、ギュッと俺の背に手を回し静かに泣き始める。
この背にどれだけ多くのもの背負ったんだろう。
もうその荷をおろしていい。そういう意をこめて、泣いているいつきをずっとずっと抱きしめていた。



*-*Side kojyuro*-*


「眠ってしまいましたな」


主の腕の中で眠る子供をみて、苦笑いした。
雪のなかでかけ回り、あの大きな獲物を振り回すは体力的にも辛いだろう。

なのに起きてそうそう、俺達に許しを求めに来るとは…驚いた。


「政宗様」
『なんだよ、』


おさなごを抱きしめる、彼女へと声をかければまるで母親の様な顔で俺を見上げた。

幼い頃からそうだ…政宗様は年以上に大人びて見える。
だからあんな考えもおきるというもの

そんな政宗様の横に座り、開けた障子から見える月を見上げる。


「貴女様も、苦しみければこの小十郎に、貴女様の背負っているその荷をどうか背負わせてくだされ」



月は太陽の光が無ければ、その輝きをもつことは無い。
政宗様のあゆむ道に光がないのであれば 、



俺はその光なりたいとおもった。




執筆日 20130728



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