大きな腕が温かくて、離れたくなくてただだきついていた。
後ろ手にそっと障子が閉じられて、そのままそっとたたみの上に降ろされる、
でも、離れたくない・・・
いやだ・・・
「政宗様、」
『消える、のか?』
「・・はい?」
『っ小十郎は、死なないで・・・置いて・・・逝かないでっ』
輝宗様が・・・父上を「私」が殺した。
大切な弟を・・・「俺」が殺した。
小十郎と綱の父上を、「俺」が殺した。
たくさんの大切なものを・・・私は殺した。次は私のせいで成実が死ぬかもしれない。俺のせいで小十郎が死ぬかもしれない。
そんなの、耐えられない・・・一人になんて・・・絶対に・・・耐えられない・・・
「ですが、俺は貴方のことを守れませんでした。」
『っでも・・・』
「最悪、二度と刀を握れない身体になったかもしれないんです。俺が貴方を守る立場なのに。」
なのに・・・小十郎はそう言って・・・。
でも・・・違うだろう・・・
『違う・・・っお前は』
「腹を切る覚悟は、出来ています。」
『お前は俺の背を守るんだろ!!』
「・・・」
なのに、私から離れようとするなんて・・・そんなこと・・・絶対に・・許さない。
ぎゅぅっと小十郎の首に腕をまわして、抱きつく。女の恰好で抱きつくなんて、思いもしなかったけれど・・でも、そんな事を気にしていたら意味がない。
『小十郎、もし、俺が戦に出れなくなったら私を娶れ、そうしたらお前が伊達の跡取りになる。』
「政宗様。」
『そうなるまでは、お前が死ぬことを許さない、私のそばにいて、私の背を守って・・・絶対だ、』
「貴女様が望むなら、」
こんなの、わがままだってわかってる。
でも、
平和な世に生きてきて・・・見失ってた大切な命の重さが・・
死んでいった奴等の想いが・・・
ひしひしと、心を揺さぶって
執筆日 20130713