もう、どうでも良いと思えた。
私の身なんて・・・どうでも・・・


小次郎を殺してしまった。
私の不注意のせいで・・・大切な、弟を・・・



『あぁああああ!!!!!』



もう、人を殺したとか、そんなのどうでも良くなって手当たり次第に敵をなぎ倒す
刀一本でどこまでいけるかなんてしらねぇ。

ただ、斬って斬って斬って斬って



赤に塗れて・・・






いっそ、殺してくれ。






頬に滑ったのは、


血か・・・ それとも






「た、たすけ・・・っ」



血に濡れ、いつもの蒼き戦装束の見る影も無い。
刀を構えそして生気の宿っていない目はまるで、人形のようで、


命乞いをする敵など、興味も無いというように刃こぼれだらけになってしまった愛刀。
それを振りかざして、そして、



パシッ



『・・・なにをする、小十郎・・・』

「もう、奪う必要もありませぬ、政宗様。」

『こいつは敵だ、皆を殺した敵だ』



その振り上げた刃を掴む腕を、小十郎が掴んだ。
ギロリ、と左目を小十郎へと向ければ、小十郎はただ冷たい瞳で政宗を見下ろしていた。

敵、

それがこの場でのお互いの関係。
わからせるように、言っているが、小十郎はその手を離さず、その隙に政宗の標的にされていた男は逃げ出した。



だが、

それだけではない。



「貴女様は、痛みさえ忘れてしまいましたか。」



小十郎の押さえる、政宗の右腕は血まみれで・・・
それは返り血だけではない。

それを、小十郎はわかっていた。



「御免」



ぐいっと、引かれバランスを崩した政宗。
そのまま小十郎の拳が政宗の鳩尾に入った。



「景綱!?」


それに、綱元から驚きの声が上がり、傾いた政宗の身体を小十郎は先ほどとは違い優しく抱きしめた。
政宗の手から滑り落ちた刀を拾い、近くにいた成実に渡す。



「な、なんでいきなり・・・」


刀を渡された成実は、ただ戸惑ってそれを受け取る。
それから政宗を抱き上げて歩き出した。


「もう、戦は終ってる。
 ちゃんと小次郎様は守っただろうな。」


もう、この世には居ない政宗の弟。
本陣へ向かうその足は止まらない。

周りからは心配の声がかけられるが、あまり関係ないようでそのまま本陣へと足を踏み入れた。



「景綱」



そんな、彼へと掛けられた声。
それは小十郎と同じく、蒼の戦装束に大量の血を浴びた綱元。

その目は、戦前とは違い・・・悲しみに濡れていた。



「父上が亡くなりました。」



吐き出された言葉は、


執筆日 20130630



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