俺が始めて梵にあったのは5歳だったから・・・梵が6歳のとき
梵は覚えてないかもしれないけれど、俺にとっては思い出だった。
まぁ、政宗から『忘れるわけ無いだろ?』って改めて言われて、嬉しくて抱きついちゃったけどね・・・
一応、梵とは従兄弟で、俺は梵を知ってた。
一方的に。
だって、梵は鬼の子なんていわれていたから。
でも、初めて見た梵は傷ついたお姫様としか俺には思えなかったんだ。
綺麗な長い黒髪に、不似合いな右目を隠した白い包帯。
左目は酷くくすんでいるのに、着物はまっさらな蒼。
日の下にずっといないような、真っ白な肌は、小さな傷でもすぐに分かるぐらいに透明だった。
「ね、ねぇ・・・」
『・・・?』
庭に、一人ぼっちでいる梵に声をかけたとき、梵は子供みたいな顔をしていたけれど、
でも、でも、
「っ///」
遠めにしか見たことのなかった俺を、ただ、その目に映してくれるのは嬉しくて
なによりも、変にどきどきと心の蔵がたかなった
『おまえ、誰?』
「お、俺は時宗丸っていうんだ」
『・・・何のよう?』
でも、梵は俺にそう聞いた。
ただでさえ、曇ってた目が、今度は冷たい氷みたいな目になる。
だけど、その目に俺はちゃんと映ってるよ。
「ね、ねぇ! 俺と友達になってよ」
嬉しくて嬉しくて、しかたなかった。
そのときの俺はまだ小さくて、毎日梵に会えなかったけど、でも、絶対に護りたいって思えたんだ!
・・・でも・・あの日、梵が元服するまでは・・・
「梵・・・」
おいていかれた気持ちだった、
目の前には、蒼い着物・・・ではなく、蒼い戦装束に身を包んだ、梵改め・・・政宗
その背は輝宗様のように偉大で、大きくみえた。
俺は、知ってる。
義姫さまのことも、輝宗様の意志も・・・
だけど、まだ、梵の手は綺麗なんだ。人を一人も殺して無いんだ。
なのに、これから、血に濡れるなんて・・考えたくもなかった。
『もう、政宗だっていってんだろ、時。』
長かった髪は、もう短くなっていた。俺にいじらせてくれたときの梵は居なくって、右目は、包帯ではなく眼帯をつけていて・・・
腰には刀が6本。普通じゃない。でも・・・梵には、普通なんだよね。
「俺も、後少しで元服だからな!」
『Ah? 俺にとってはまだがきだ。』
「ちっさいころの梵は可愛かったのにな!」
『んな御託はどうでもいい、小十郎を呼んで来い。』
「ちぇ、わかったよ。」
だけど、俺にとっては、政宗じゃなくて、梵のままなんだ。だって実感がわかない。
とか、そういう問題じゃなくて・・・
梵は・・・政宗っていう仮面を被って、涙を隠しているんだって、仮面を外したときは、泣いているんだって、そう思うから。
なんでって、俺はさ、ほら、
小さい頃から梵が大好きだったから。
*-*成実の思い*-*
だから、梵が輝宗様を殺したって聞いた時は、血の気が引いた。
梵の指示ですでに輝宗様の城にいた俺はすぐに到着したばかりの梵の元に行ったけど・・・その場の雰囲気に押しつぶされそうになって、声なんてかけられなかった
でも、梵の顔はすぐに見えて・・・頬が一箇所土で汚れていた。
すぐに分かった。
泣いたんだって、
ねぇ、もっと頼ってよ。
大好きで大切な梵・・・
執筆日 20130616