何日寝ていたのだろう。
ズキズキと、右目が痛い。酷く熱を持っているように感じる。
外は、もう暗い・・・
一体どれくらい・・・たったのだろう
苦しい…。
フラフラと、身体を持ち上げて、そばにあった羽織を手に取った。寒い…とそう感じるのは体が生きようとしているからだ。本当だったら、さっさと寝直して体調を整えるべきなんだろう。
けれど、じっとしていられなくて、障子を開けて外に出る。ぺたっと、地面に素足をつけてそのまま歩いた。
熱を持っているからか、ひんやりとした土の感触がひどく気持ちがい
それから、ある樹の上に、見つけた。
小さな巣。そこに寄り添うように二羽の燕がいる。
あぁ・・・一生懸命に生きようとしている。苦しいのは、一緒なんだ・・だったら・・・ 私も生きなくちゃ・・・小さな命が・・・・頑張っているのだから・・・
「梵天丸様」
呼ばれた気配をたどって後ろを振り返れば、忍。初めて声をかけられた。それからふわりっと、今、羽織っているのよりも少し丈の長いのをかけられる。
「どうか、中に入ってください、明日が辛いですぞ」
それから肩を押されて、部屋に戻される。
確かに痛いし、苦しいし、頭がグルグルするけれど・・・平気なのに・・。
愛された罪って・・・こんなにも辛いのだろうか・・・
そんな日々が続いた。
夜のわずかな時間だけは絶対にあの巣を見に行く。
昨日は卵があった。それを見て、嬉しくなる。
早く、雛が孵らないだろうか・・。そういえば、最近は母上に会えていない…。会いたい…母上に…父上に…。父上はまだ…戦だろうか…死なないで欲しい
喜多にも会いたいな、乳母だけれど…また…。
会いたい・・・会いたい・・・
そう思ったら涙が出てきた。いつからこんなに涙腺が弱くなったのか。涙を零さないように夜空を見上げる。
空には月…美しい上弦の月。
でも、どこか寂しい。
明日は晴れるだろうか・・・それとも雨だろうか・・・
右目は元に戻るだろうか・・・。
不安はつのるばっかり。神さま、どうか・・・
また、笑い会える未来を下さい。
小さな竜は願う。
未来へ輝くその月に・・・。
執筆日 20130212