と、成実がいきなり言ったことに目の前で茶を飲んでいた小十郎と綱が思いっきり吹いたのは仕方が無いことだろう。一緒に飲んでなくてよかったと思うが、冷ややかな目で見てしまったのは仕方ない。
「おい、成実・・・テメェいきなり何言いだしやがる。」
「え、だってそうじゃない?やだなぁ、もしかして梵のこと行き後れにする気なの、小十郎さん。」
「ッ!!」
ハラリっと小十郎のいつもオールバックになっている前髪が崩れたのは見なかったことにする。あぁいうときの小十郎こそ見逃すべきだ。
なのに成実がそんなことを言うから青筋まで浮かんでしまった。あーぁ、死んだなあいつ。自業自得だろ。
「まぁ…成実の言い分も分かりますが…」
なんて、考えていたのに、綱が言ったのはその言葉、それに持っていた筆がパキリっと軽い音をたてて折れてしまった。その音に気がつかないわけがなく、3人の視線が私に向く。
静かに折れた筆をすずりにおいて、立ち上がった。
「政宗様?」
『私は婚儀なんて上げる気はさらさらないわ。』
「うぇ、だって」
『まずは奥州の平和。なのに自分の事にばっかり考えてたらいけねぇだろ。』
それに、小十郎が反応するがそう静かに言って成実の反論に冷たい視線を向けつつ言えば、言葉を詰まらせた。
クツクツと笑ってそう言って、歩く。
『それに、これからって時に、時は私に奥に入れってのかよ。冷たい奴だ。』
そして去り際にとどめのようにそう言ってやれば、ガタっと立ち上がって「そんなわけないだろ!」って声を張り上げた。あれ、つか、私って成実より仮にも目上だよな、年上だよな・・・。
『(ま、いっか)』
兄弟みたいなもんだし。
だがしかし、軽く見てたのは私だけだったなんて、そのときの私は知るよしもなかった
執筆日 20130525