『(Shit…いきなりなんだってんだ…っ)』


空色の着物を身に纏い、私は城下にいた。なぜかといえば、あいつ等のせいだ。
いや、元はと言えばただ一人…成実のせいなのだが…

確かに、俺も成実ももう婚儀を挙げても良い年頃だ。だが、まぁ、私は純…純…いや…確かにこの時代の理には慣れてきたつもりだが、まだまだ婚儀を挙げる気はさらさら無い。
なのにだ。


『(四国の長曾我部と見合いだぁ?ふざけんな。)』


私は、女だ。道具として使われるのは知ってる。男として元服したにも関わらず、その話が持ち上がり…。私はまだ仙台を統一すらしていない。せめて、仙台は日ノ本1安全で、豊かな地にしたい。だから、まだ奥に入るなんて考えらんない。
と、この前言ったはずなのだが…やはり、行き遅れという言葉がきいたのだろうか


『はぁ…退屈なHolidayだ…』


一応、執務も終わったから何もやることはない。何も言わずに城を出ると小十郎がうるさいから置手紙もしておいた。「見合いが終わるころあいに帰る」と。

部屋に残してきたから大丈夫だとは思うが「なぁ。」と声を掛けられた。


『あい?』


一応、普通の女子らしく返事をした。現在いるのが茶屋の店先。

実際問題、奥州の民は皆私がここにいれば切実な願いが聞けるからよく来るが、今聞いた声は、初めてのもの。ゆるりっと顔を上げれば、見えた銀色。

左目を眼帯で覆った大男。ちなみに私は眼帯は目立つから包帯と前髪でガード中だ。って、私の事はいいとして…こんな男知らない。


「奥州筆頭の城からうまく隠れられる面白い場所ってしらねぇか?」
『…は?』
「いや、俺ちぃと追われててな。あー…弥三郎っつーんだ。かくまってくんねぇか?」


そしていきなりそういわれたからあっけに取られた。だって、そうだ。奥州筆頭を目の前にして、言うことじゃない。周りの民があっけに取られてるのが盛大に笑える。笑わないが。っていうか、追われてるって…指名手配をした覚えは無いんだが…


「出来れば、穏便に済ませたいんだが。」


って…いや、そう言われても困る

小さく、微笑んだ。それから視線を茶屋の中に向けて、「すみません、胡麻団子包んでください」と声をあけた。まぁ、あれだ。


「もう帰るのかい?」
『あい、ちょいとこの兄さんに奥州の良いところ見せてきます。』


そうすれば奥にいる女将さんが私へと声をかける。ちなみに胡麻団子とは暗号だ。

一応、この奥州を見知らぬものってことだからな。武器は持ってないにしろ体つきは良い何かされたらたまったもんじゃない。お金を払って、包みを受け取る。
私のいきなりの行動に目をパチクリさせて固まっている自称・弥三郎が面白くて思わず笑い、手を引いた


「お、おい!」
『あそこは奥州筆頭も、その筆頭の腹心もよくあそこを訪れるからすぐに見つかるわ』


女は男の3歩後ろを歩く。今の世はそうだが、私には関係ない。むしろ、男ポジションだしな。彼にとっては驚きにしかならないだろうが


『私は藤と申します。今は城で女中をしておりますれば』
「そ、そうなのか?」
『今日は非番なんでつき出したりしませんよ。』


今の私は政宗でも、梵でもない
藤っていう女子でいい。

それに、私の考えが当たっているとしたら、この男からは潮の香りがする。つまり・・・だ。

今日私の元に訪れるはずだったその男か、奥州の外側海に近い方から来たということになる。奥州筆頭として、自慢したいのは当然だろ?





***

で、お団子もって私が弥三郎の手を引いて来たのは小十郎と輝宗様としかいっしょに見ていない秘密の場所。微笑んで振り返れば私とは逆に目をパチクリさせて、この風景に魅入っているようだ。


「すげぇな」


でも、言われた言葉に誇らしくなる。


『でしょ?奥州王は何よりも民の幸せが幸せなの。だから逆らう奴は許さない。』
「なるほどな」


そう言い放った。まだ、戦で一人も殺したことの無い奴が何言ってんだか。まぁ、良いんだけど・・まだ平和とは言い切れないんだけど・・・な・・・。


「なぁ、お藤さんよぅ」
『なに?』
「お前は西海の鬼をしってるかい?」


なんて考えながら、いつもの定位置に座れば、私の隣に腰掛けた弥三郎が言った。
いや、もうねた晴らししても良いと思うんだけどな


『西海・・・西の海ってことは・・長曾我部元親ってとこかしら?』
「あぁ」
『それが?』
「その、よぅ」


でも、そう言って私を見るから、視線を戻す。あぁ、そうだな。


『(つか・・・なんでお前まで逃げ出してんだよ・・・)』


結局あってる。
見合いって場所じゃないが・・・


「あこがれるぜ・・こういう町や民衆の笑顔」
『・・・』
「なんつーか、こういうの良いなって」


だが、そのまままた視線が町に戻る
はぁっとため息をつけば、すぐにその視線が戻ってくる。


『姫若子がそんな風に考えるなんてな』 
「な!? おま、は?」
『隠し事下手すぎ、っつーかひねりなさすぎ。っつーか何見合いの席抜け出してんだよ、西海の鬼さんよぅ』」


それからそう言ってやれば、意味がわからないという風に驚きの声が上がったが、
口元を上げてそう言ってやれば、はとが豆鉄砲食らったような顔してっから笑った。


『まぁ、団子でも食べながらTalkと行こうぜ、改めて、奥州筆頭、独眼竜・伊達「藤」次郎政宗ともうしまする』


っていうか、見合いの席に二人いなかったらもう駄目だろ。


結局小十郎が迎えに来たのはそれから半刻ほどした後だった。


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