元服を終え、私の元にやってきた伊達成実こと・・・元、時宗丸は私にそう言った。
元服を終えてからたまに文は交わしている程度だが交流はある。それに私に名をくれた人だしな。義姫さまとは一度も、あれ以来会っていないが・・・なんか、もうどうでもいい。だが、成実の言葉には驚いた。
『Ah?なんで』
「だって、父上でしょ、梵の」
むっとして、言葉を紡げば、それに成実はマユをひそめて、私の手を掴んだ。
「輝宗様、寂しそうに笑うんだ。本当なら、梵にもさせてやりたかったって、成実のようにって、梵にばかり、悲しい思いをさせたってねぇ、梵っ「成実!!」っ!!」
そして、子供のようにただ、ただ、言葉を紡ぎ続ける成実に、鋭い剣幕で声を上げたのは小十郎だった。私から成実を引き剥がし、庭へと放る。ずざざっと地面を成実の体が転がった。なんて力だ…こえぇ。
多少固まったが、瞬時に小十郎が私へと頭を下げた。
「申し訳ありません、政宗様。」
小十郎は視線を上げない。
ちらりと成実に視線を向けるが、すぐにそらした。
『…良い、下がれ。』
「梵、っねぇ梵ってばぁ!!」
いつもより、声が引くなる。身をひるがえせば、また、叫ばれて、足を止めた
『黙れ、もう、あの方との縁は切れてる。俺が、政宗になった時にな、伊達政宗に父親はいねぇ。分かったか?』
「っわかんないっわかんないよ!!」
『Ok、なら分かるまで俺のとこに来るな。来たら従兄弟なんてかんけぇねぇ、テメェをたたっきる。分かったか伊達成実!!!』
小十郎も、だれも悪くない、悪いのは私だ。でも、しつこい成実も悪い。こいつは反抗期か・・・
でも、確かなのは俺は、伊達政宗。独つ眼の・・・竜だ。
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「政宗様。小十郎にございます。」
外から聞こえる小十郎の声に、筆をおいた。
あれから1刻ほどたってから…ということは成実は小十郎から説教を受けたということだろうか。
それとも…否か…
『OK、はいれ。』
小さく、小十郎に言葉を返す。そうすれば控えめに戸が開かれて少々表情を歪ませる小十郎が入ってきた。なんで、小十郎が表情をゆがませるのか、わからない。
『どうした、小十郎。』
「・・・政宗様、この小十郎、成実と同じ気持ちにございます。」
けれど、そう聞けば、小十郎は真剣な顔で私を見た。
それに眼を開いてしまう。
だって、そうだろう、
小十郎がそんなことを言うのがとても珍しい。
『いきなり、どうした。』
「ずっと黙っておりましたが、元服をしたということは初陣を行うということ、わかりますか、命を落とされるかもしれない、ということですよ」
『あぁ、そうだな。』
「ですから」
『いい、いいんだ、小十郎。』
思わずそういえば、小十郎はそのままそう言った。
今まで何も言ってこなかった小十郎が・・・だ。
それに、すこしどもってしまうが・・・小十郎に微笑みかける。
『小十郎、あの方は俺とは違う。俺には、会う資格は』
「では、梵天丸さま。」
『っ小十郎?』
「あの場所に行けば、あなたは貴方さまに戻れるというのでしょう。小十郎と約束してください、3日後、馬の刻にあの場所で」
『っまて、こじゅ』
「いい加減、ご自重なされよ、」
どうしてだろう、
小十郎は、いつも私の何歩先もよんでいる。
執筆日 20130426