早めに結い上げをさせて、さっさと家から追い出そうっていう根端なのだろうか…。こんな娘、娶りたいという男もいないだろうからな。仕方ない。
もう天珠は空を翔ることができる。それに私は、もうグレてやるんだから。障子に手をかけて勢いよく、横にスライドさせた。
『何かご用ですか、My Father?』
そして、英語交じりでそう発した。
でも、無表情で、だ。前回は、一言もしゃべらず終わったから可愛いものだっただろう。
今回はこんなになってしまったのだから、驚いているんじゃないだろうか。正直私自身も、こんなに勢いよく障子が滑るとは思わなくて驚いたけれど、平然を装った。
「梵天丸、少しは女子らしくしたらどうだ。」
『No progrem!どうせ結い上げすりゃこことはオサラバだろう?なら女らしくする必要もない、Princesでもねぇしな。』
それに、若干怒られたけれど、あんまり関係ない。でも、私をもう梵天丸として見ていないことは良く分かってる。名はただの記号でしかない。
それから部屋を見渡せば、もう一人・・・輝宗様の近くに、オールバックにした男がいた。一度だけ会ったことがある。小さい頃、この目を失う前だ・・・驚いている。でも、もう終り、もういいんだ。
「とにかく、話を聞きなさい。」
そんな私に有無を言わせずに、そう言った輝宗様。目を細めてしまったが、一度視線を外して、肩の力を抜いた。
『長居する気はねぇ、アンタだって私を見てることほど下種なことはねぇだろ。』
「…それでも、話を聞いてはくれるね。」
『あぁ、さっさと済ませてくれ。』
座るように促されたけれど、私は立ったままだった。此処にいたくはないから。次に視線が向いたのはその男だった。
「初めまして、梵天丸さま。私は片倉小十郎と申します。今日から貴女様の御傍にお仕えいたします。」
その男は、深く、頭を私に下げた。
年下に…女に・・・頭を下げるなんてあほらしい。
くるりっと身をひるがえす。
後ろから私の名を呼ぶ声が聞こえたけれど、無視。あの男が来る前に私は部屋に戻る。
ただ、少しアレだったのは・・・
『(あいつは覚えてねぇんだな。)』
かくれ鬼と称したあれに、私が巻き込んだことを
竜の小さな思い出
執筆日 20130224