瞳に写る覚悟

さて、そろそろ帰るかなと、パーカーを羽織ったところで引き留められた。
今まで聞こえなかった低い声に振り返ればそこにいたのは、あきらかにトップクラスという風格を持った人たちだ。
・・・っていうか何人か老け・・・いや、違うか


「君、夕べの連中のこと、しってんのやろ」
「我々にはそれを知る権利があると思うが。」


ミルクティー色の男と、それから眼鏡をかけたバンダナ君と同じジャージを着ている青年がそう言った。まぁ、確かにこいつらは仲間を傷つけられた被害者だ

知る権利は、確かにある。ひとつ息をこぼして瞳を開いた。


『クラック。』
「クラック?」


小さく、けれどしっかりとそう言葉を発すれば後ろにいた少年がポツリと、呟くように言ったから振り返る。


『ロンドンを中心に活動しているストリートテニスグループ。聞こえはいいけど、実際は潰し屋。問題を起こして、学校やスクールを追い出された。公式にプレイできなくなった者達を集めた。そのリーダーがキース。彼もかつては世界を目指せるといわれていた天才だった。』


自分で言えば思いだすのは、リアルテニスのボールにあたり崩れ落ちる多くの選手たち。


『クラックはイギリスのテニスクラブや学校に現れては相手を潰して回ってる。 中には、リアルテニスのボールで大きなダメージを与えたり、な。』
「リアルテニス… か」
「夕べもゆぅとったけど・・なんやそれ?」
「簡単に言えば今我々がやっているテニスのルーツだ。」


頭の中に浮かび上がっている幻を、もみ消した。もう、嫌だった。
俺のせいで、テニスを出来なくなった奴もいるから…だから…。


『キースたちの今度の狙いは明日からの大会。主だった選手たちを潰し、さらには大会も潰そうって考え』


だから、俺の考えを言う。そう、きっとそれをあいつ等は望んでる。
己が出れない試合に、外国から来る選手たちが出ることが…自信なんてなくしてしまおうという考え。


「一つきいても良いか?」


少し、シンっとなったが、そう声を出した銀色の髪の青年が言った。答えられる、という意味で視線を向ければその青年は後ろにいた少年に向く。


「そろいのリングをつけてるからにはお前もあいつ等の仲間なんだろ。なんでそいつを助けた。」


あぁ、そういうことかと、小さく納得した。
そりゃ、そうだろうな。俺は、これをつけている以上・・・あいつらの仲間であり、こいつ等の敵。だから、助けるのはおかしい。

っていう、考えだろうが・・・


『俺は・・・クラックを抜けたんだ。』


下を向いて、目をつむってそう言った。
抜けた。俺はキースを・・・


「じゃあ、君は今はクラックのメンバーじゃないと」


それから、その言葉にちいさく頷く。それでも・・・このリングを外せないのは・・・俺の覚悟だ


「せやけど、クラックのメンバーっちゅーことはあんさんも大会にはでれへんのやろ?」
『・・・今は、な』
「クラックがどこにいるかは、しっているんだね。」


言われた言葉に、静かに視線を上げる。
聞いてどうする・・・だが・・・今しゃべった黄色のジャージでリストバンドつけてるこの女顔の男は只者ではない。
と、勘が言っている。敵にしたくないタイプだ


『・・・・「King of Kingdom」』


だからじゃないけれど、言った。王国の中の王。

少々ネーミングセンスはどうかと思うが、どっかの御曹司の別荘らしい。
あまり使われていないのをピーターが見つけてきて面白い仕掛けがあるからつかっていたんだ。まぁ、それは私以外の他の人も思ったらしいが・・・


「そのことを、警察で話してくれないか?」
『いやだ。』
「何故だ、彼等を庇うのかい?元は仲間だから・・・!」


けれど、言われた言葉に言った男を睨んだ。
バンダナ君と同じジャージを着てて、さっきの眼鏡の青年と一緒に来た男。

大体、同じジャージが二人ずつってことはおそらくリーダーと副ってことだろうな。


『クラックは、必ず俺が止める。』


だけど、そんなことは関係ない。俺は、ただ、俺のやらなくちゃいけないことをやるだけだと・・・。





《朝までに戻らなかったら自由にして良い》
(しかし・・!)
《頼む。》
(なら、任せたら良いんじゃないっすか?)


あぁ、だが・・・あの少年は良い奴らしい。
あるきながらラケットを返す。

(元は仲間なんだろう。)

あぁ、そうさ…だから…

《仲間、だよ。 だけど、俺もあいつも・・・このままじゃ浮かび上がれない・・・》

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