スポットライトの当たらないコートで

体を休ませるために寝て、数時間がたち、充分に動けるようになった。…のだがどうやら寝すぎたらしい。もう外は暗い。完璧な夜だ。苦笑いがこぼれたがこればかりは人間の第三欲求だ。仕方がない。

さっさと服を着て、あいつらが出現するであろうその場所を走った。救急車の音を聞いて、ギリッと唇をかみ締めて、あの時と同じようにラケット片手に走った。

アイツが、いるはずだ。
そう思ったとき、小さな爆発音が聞こえた。そして、ある一つのコートへと「アイツ」が降り立つのが見えた。っつーことはあのチビもいる。

バコンッ

普通とは違う、けれど俺には普通のインパクト音。それは、コートの中にいた一人の身長の高いほうの少年を打ち抜いた。そして、逆側からは、あのチビが


『っ!!』
「!」


ザッと、唖然としている帽子少年の前に降り立ちそして、チビが打ったコルク玉を打ち返しそれを「アイツ」へと打ち込んだ。
俺の返球にぶち当たるほど愚かな奴じゃないとわかっていたから打ち返せたわけだが、ふわりと、パーカーがゆれた。案の定俺の打ち込んだボールは簡単に手で止められているのを視界にとらえる。


「…裏切り者がよく俺の前に顔を出せたな、シウ」
『相変わらずやり方が汚いね、キース』


そして、言われた言葉に、そっとキースに言葉を返した。裏切り者、という言葉に多少心が痛んだ。けれど、それに返してはなにも言えない。裏切り者なのは確かだから・・・


「死に底ないが命乞いでもするつもりか?」


けれど、次に言われた言葉にはイラつく。だからちらりとそちらに視線を向けて


『お前は引っ込んでなさい、ピーター』


低い声でそう言ってやった。そうすれば、肩に担いでいたラケットを振り下ろして「なんだと!」と俺に反論する。そういうところがめんどくさくて、子供っぽいんだ。


「正義感を気取ってるつもりか、後で後悔することになる。」
『どう後悔するのか、そこら辺教えて欲しいね。』


だが、俺たちの空気は、だんだんとピリピリしてくる。
これが普通だ。「あの時」はあんなにも… いや、なんでもないが…


「二度とラケットを握れない体にしてやる。」


あぁ、そうか、そっちがその気なら


『奇遇だな、俺も、おんなじことを言おうと思ってた。』






《キース・・・お前を二度とテニスの出来ない身体にするまで。ぶっ潰す。》
(どちらかに終りが来ない限り、俺たちに終わりはない)
《あるいは、どっちも・・・ってね。》


振り上げたラケット。
放たれたボール。

輝く青の閃光。


それが、まぶしかったが・・・
酷く、水の中を思わせて怖かった


あぁ、お前はまだそこにいるんだな。

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