朝日を浴びて


はじかれたのはキースのラケット。

カラカラ・・・っと乾いた音をたててキースの後ろに転がっていったそれを、控えていたピーターが拾って持ってきた。

それに手を触れ握った瞬間、キースの表情が歪のが見えて、不安になる。
ピーターはそれに不安げに声をかけたが、手首を握って、そしてこちらを振り返ったキースの目は・・・どこか、光が宿っていて


『キース・・・』


小さく彼の名を呼んだ。
けれど、彼がラフプレーをするのは、そこまでだった、そこからは、普通のテニス。

越前の放った万有引力がキースのコートをかけて、そしてポイントが決まる。
ソレを見て、そして、ゆるりとこちらに視線を向けたキース。

そんな、キースの目には・・・あのころのような感情が灯っていて。

嬉しそうに目を細めて、そしてサーブを打った。両手打ちでパワーのある打球を越前は返し、地面に身を投げてまでキースはその打球を返す


『キース!!』


越前も、酷で…キースの倒れた場所の逆側に打球を返した。急いで起き上がり、そして打球を追いかけるキース。完璧に越前ペースになっているが・・・でも・・・


『(お前・・・っ)』


それでも・・・キースの目はにごっていなくて・・・あの頃のままで・・・


『忘れてなんか、いないじゃんか・・っ』


耳元で響く気泡の音


光が、越前のラケットに、ボールに集って行く。
まるで吸収するように、空気が越前を包み、そしてそれはだんだん大きくなっていく。

なのに、キースはまるで全てを受けれるかのように、ただその光を見ていて・・・
あいつ、何もせずにそれを受けるのか、と思ったら体が動いていた。


キースのラケットを奪い、そしてボールを受け止める。
ただ、その力が強すぎて後方に飛ばされたが・・・


体が痛い・・・でも・・・背中には温かい感触があって・・・・・
ガラガラっと何かが崩れる音がする。それは、きっとキースの心の殻でもあったんだろう。


「っシウ・・・」


それから・・・耳に届く、俺の名を呼ぶ声。
ゆるりと目を開けば隣にはキースが居て、ぼんやりする頭のままで、でも笑った


『っアンタ一人、いかせやしない・・・私は、試合なんてどうでもいい・・・キースと・・・テニスが出来れば、私はそれでいいっ』


私の言葉に、キースは静かに驚いていたけれど、ふわりと光がさしこんだ。
ゆるりと光を追えば、それは私たちがぶつかったことにより崩れ大きく穴をあけた壁から差し込んでくる朝日


『見てよ、朝だ』


だんだんと日が昇って行く。そんなとき、あしもとがもぞりと動いた。


「キース・・・?」


それはキースの腰元に抱きついたピーターで、飛ばされる前は綺麗に止められていた髪がぼさぼさになってて「お前、ぼろぼろだな」なんてキースはそういうが、結構ピーターの顔は汚れてて


『っふふ、く・・あはははっ』


思わず、笑い出せばよこでキースも笑いを零す。一度ピーターを座らせるけれど、数秒しないうちにピーターの目に涙がたまり、そして、キースと・・・それから私に抱きついてきた。私に抱きつく意味はわからないけれど・・・クラック時代は弟のような存在だったから、彼は彼で、寂しかったんだろう。

けれど、ふと視線を感じて、振り返る。
そうすれば越前が私たちを見ていた


「まだまだだね」


朝日がまぶしいのか、目を細めて、紡がれた言葉、
それに思わず微笑んでしまったが、彼には彼の仲間が居る


*-*朝日を浴びて*-*


《なぁ、キース・・・》
(なんだ?)
《浮かび、上がれただろう?だから・・・もう一度全てすてて、やり直そう?》

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