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さんひきめ


眠い授業をすごして午後の練習。
コートに行けばどうしてかいつもよりも女子生徒の数が多くて、でもずっと静か。


「あっゆめ、あの子誰?」
『え?』


なんて思っていればクラスの友達が私の元に走ってきた。あの子?あの子って誰?

そう思いながらコートの中を見る。それは銀。朝ぶつかった子が、平然とそこにいた。


         
……ねぇ3匹目の羊さん。どういうことなの?



***   ***   ***
私が通れば自然と道は開いた。
そのまま入り口のフェンスを開けてコートに立てば金色の髪が静かに揺れる。

その場にいたみんなの視線が、私に向いたが、たった一人その銀色の視線だけはいらなかった。


『ねぇ、なんで部外者がいるの』


低い。本当、自分でもびっくりなぐらい不機嫌を隠さない声。部外者はこの場所ではたった一人。その銀色の女子生徒だ。静かに目を細めるが、彼女が私を認識すれば「あー、朝ぶつかった人」とこちらも不機嫌ですと言わんばかりの声色だった。

少し静かな時間が流れたけどその女子の言葉に跡部が眉間にしわを寄せた。


「アーン?ぶつかっただ?…どういうことだ、ゆめ」
『俺。C−っらない。まっすぐ歩いててぶつかってきたのはそっちだC』


跡部の声は私をとがめるものだ。イラッとそっぽを向く。はいはい、私がわるいっていうんでしょー?男っぽい私より華奢な女の子のがいいもんねー?
腹立つなぁ。


「えー、でもぉ、セレナわぁ、謝ったよ?」


本気で、腹立つ。
もうそっちに視線は向けなかった。


「まーま。ゆめも謝りぃ?セレナは謝ったんやろ?」


軽く、肩に衝撃。
それはゆーしが私の肩に手を置いたから起きたことで、いや、それ以上に言われた言葉にイラッとしてしまった。
肩に置かれた手を払えば、ぱしんっと軽い音がする。


『俺、謝んないよ。ゆーしも俺を悪者にしたいんだね。』


そのまま、まっすぐゆーしの目を見ていった。私、怒ってんのって。視線でそう伝えたつもりなのに、ゆーしは気が付いてるのか、気が付いていないのか。


「お互い様やろ、それにセレナはこれからマネになるんや、仲良くせぇな。」


この場所の空気が凍りついた。
私もだけど、コートの外に居る生徒も一斉にざわついて、異変を感じ取る。なに、それ…。


『マネージャー?』
「せやで、朝の練習のあとで言われたんやけど。」


同じ言葉を反復した。
朝練のあと…。私が着替えてる間か後ってこと…?
視線を跡部の横にいる女に向ければ「榊さんにおねがいしたんですぅ」と、媚売って…ほんと…なんなの…
せっかく、せっかく全国大会に出れるってことになったのに…っ


『っ俺は認めないっ』
「あっちょっゆめ!?」


言い放った。言い放ちながら、数歩離れればもうゆーしの手の届かないところ。そこから身を一気に翻して走りだす。私一切悪くないのに謝りたくなんかない。第一にあんなやつ仲間なんて認めない。

それに、今までだってマネージャーなんて取らなかったじゃん。それをいきなり認めろって言われたってこっちだって困る。コートの外に出れば、周りから私の名前を呼ばれたけれど、気にしている余裕なんて無かった。


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