▼ 普通の日常
「して、主はどう思う。」
『わたくしですか?』
日はのぼり、その女の姿は屋敷が主…武田信玄が私室にあった。
その身は奥女中の着物にて、さっそく昨晩の姿の面影はなく…
緑がかった黒の髪を肩より多少長めに伸ばし、けれどそれは結うこともなく滑らせている。
『そうです、ねぇ…昨日は奇襲をかけ忍は大半つぶしてきましたから』
「ほう…」
『まぁ、奥州を多少助けただけにございますし、文句はないと、思いますが…』
「そうか、ならばよい。」
へらり、と笑って見せるその表情はただの少女のようだが実際は違う。
彼女は誰もが恐れる真田十勇士が長。
風魔にも劣らぬといわれるその力は一見戦国に革命を起こすかと思いきや彼女はそれを己を守るためにしか使わない
それは己が大切なものを守りたいがため、そのためだけにその身を武器にする。
どれだけその身が傷つこうとも構わず、武器としたその体を赤に染め上げるのだ。
今回の奇襲は奥州のそれがこちらに迫るかもしれないということを危惧して。
飛び火でも、彼女は許さない。
『一応気にはなるんですよね、特にあの少年。』
「ん?」
『弁丸とおんなじくらいの子供がいましてね、ちょっと危ない感じしたんですけど…やっぱり家のことになるとちょっと口はだせないなぁって』
けれど明後日の方向を見るとぽそりとつぶやいてけれど首を横に振って微笑んだ。
彼女の言っている子供。
それは現奥州の武将である伊達輝宗の第一子だか、そんな彼の厄介事にまで首を突っ込むほど彼女にも時間はない。
『これから弁丸のところに帰ります。しばらくは仕事入れないでくださいね』
「それは主次第じゃろうて」
『ふふ、はぁい。じゃぁ、また次のお呼びをお待ちしておりまする、お館様』
そして、しゅっとすぐに消えた。
彼女の帰りをまつ、その少年のもとへ
「あやつにもこまったものよのぅ」
執筆日 20130829
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