▼ 一つ、一つ
*-*Side Yukimura*-*
名が、変わった。
それは元服の儀を行ったから
だが…一番に呼んでほしい人が…ここにおらぬ…
会いたいのに…っ会えない…
「幸村様。 失礼します」
シュタリと、おりたった佐助。
今や、姉上とともにあった時間は佐助とともにあるようになった。
それが酷く苦しいのだ。
ゆるりと顔を上げれば少しいつもと雰囲気の違った佐助で
「本日より、朱音様の跡を継ぎ、真田忍隊の長を務めることになりました。」
言われた言葉に、持っていた筆をおとした。
ぐしゃりと、文字がゆがむ。
久方ぶりに聞けたその名と…聞きたくなかった、その言葉。
「…姉…上…」
忍をやめただけか…それとも…
そう思うと、心の臓が悲鳴を上げた。
息がしずらい。
聞きたくない…
聞きたくなかった!!
「幸村様…」
佐助の声が、震えている。
あぁ、なぜだ。
ただ、俺は姉上に幸せになってほしかった
それは、できれば…
俺の手で…
執筆日 20131025
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